にせもの嫌い
2005年4月28日我々、日本人の目から見ると、よほどの特徴でもない限り、黒人さんの顔って、全部同じに見えるよね。
それと同様に、欧米人の目から見ると、我々東洋人の顔って、皆、同じに見えてしまうのである。
そんなのが原因だと思うが、私が米国の街中を歩いていると、私はある東洋人に間違われてしまうことがある。1度、2度のことではないから困ったものである。これを読んでいる方の中で、私と面識のある方なら、「似てない!」って噴飯ものだろうし、私自身も、全く似ていないと思う。その東洋人ってのが、ジャッキー・チェンなのである。
休日の昼間に、ニュー・ヨークやロス・アンジェルスの街中を歩いていると、「ジャッキー!」と、子供によく声をかけられるのだ。米国の子供たちって、忍者もの、カンフーもの、大好きなのである。子供たちはその手の三流のテレビ番組を好んでよく見ている。ジャッキー・チェンの映画も凄い人気なのである。
子供に単に声をかけられるだけなら、無視していればよい。しかし、中には、「ジャッキー!」と声をかけると同時に、「アチョー!」と奇声を出して、私におもいっきり「蹴り」を入れてくる子供もいるから困ったものである。いくら相手が子供だと言っても、手加減も足加減もなく、本物のジャッキー・チェンだと思って、おもいっきり蹴るんだよぉ、痛いのなんの・・・。なんで、似ていない私が、こんな目にあわんとならんのぉ?
たいていの子供は、その次に、私に握手を求めてくる。「ジャッキー、握手しろ!」とでも言ってくる憎たらしい悪ガキなら、ほっぺたにビンタしたくなる。しかし・・・である。本邦初公開なのであるが、実は、私は子供が大好きなのである♪ だから、可愛い子供が「ジャッキー!」と微笑んでくれると、その笑顔に負けてしまい、無視して通り過ぎることができなくなっちゃうのだ。本物のジャッキーだと思っている子供の夢をこわすわけにもいかないから、本物のふりをして、教育的指導をしてくるのである。蹴りを入れられても、ジャッキー・スマイルを作り、「いいかい、カンフーは無抵抗の人に使ってはダメなんだよ」とか、「アチョーって言うのはブルース・リーだからね」と教える。そして、本職がミュージシャンという一種の芸人である私なので、サービス精神旺盛であるから、カンフーのかまえをして、くるりと回し蹴りをして見せてあげるのである。ちなみに、私はカンフーの経験もなければ、柔道、空手、合気道などの何の経験もないド素人なのである。運動神経もめちゃくちゃ悪いんだもの。その子供の背後には、保護者である父親が付いていることが多い。たいていは、おなかの出た太っちょで、短パンをはいたおっさんである。私の回し蹴りを見たその親子は、「やはり本物はすごい!」と飛び上がって喜んで私に握手して、手を振りながら去っていくのである。いいかげんなものである。
時には、にせものジャッキーは、サインをねだられる事もある。しかし、にせものの証拠を残すのはマズイので、いつも断っている。
ある時、1度だけ、どうしてもサインしてほしいと、子供に泣かれそうになったので、その子のTシャツに「Jacky」とサインしたことがあった。「Jacky」だけでは物足りないと私は思ったので、いっそのこと、漢字で「弱奇異」とでも書こうかと思ったが、ひらがなで「じゃっきい」と書いてやった。すごく心が痛んだ。その子が成長して、いつの日にか、そのサインがにせものだと判明しちゃったらどうしよう。それが原因でグレてしまい、銀行強盗とか列車強盗にでもなったらどうしよう・・・と心配している。その時以来、にせものジャッキーは、2度とサインしなくなったのだった。
ちなみに、本物のジャッキーは「Jacky」ではなくて「Jackie」だそうである、これはヤバイかな。
そして、今日も、にせものジャッキーがアメリカを行くのだ。これでいいのだ。
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