やおい嫌い (5)

2005年7月11日
 
そんな日米の「やおい」&「スラッシュ」の話題を飲み会の席ですることが度々あった。その内容が知人から知人へと次々に伝言ゲームのように伝わったようで、いつのまにか私が「スラッシュ評論家」にされてしまい、遂には某出版社から「スラッシュ小説の翻訳をしていただけませんか?」と声をかけられてしまったのだ。その出版社は日本人であればほとんどの人がその社名を知っているであろう大手の出版社だったから驚いた。へぇ〜、あの出版社が「スラッシュ」を出すとは・・・。その出版社の担当者M氏とは何度か電話で打合せをしたのだが、「詳しい打合せ会議をしたいので、本社までいらしてください」と言う。だから、行ってきましたよぉ、飛行機に乗って東京まで。
 
その会議は、いわゆる企画会議だった。私と、あの担当者M氏の他に、企画を通すか否かの決定権限があると思われるエライ人、予算をいくら与えるのか決定権限があると思われるエライ人など、9人が集まった。会議の冒頭で、M氏によって私ことが「米国の状況に詳しく、今回の企画にアドバイザーとして参加していただき、翻訳も行なっていただく先生です」と紹介されてしまった。それ以降、私は「先生」呼ばわりされてしまい、いや〜な気分になった。
その会議ではM氏の作成した企画書が配られ、それを吟味しながらその企画の有用性を評価・判断するものだった。その企画書を斜め読みして、私は笑ってしまった。だって、「スラッシュ」を、たかが「スラッシュ」を、大マジメなビジネス用語を駆使して解説しながら、それの翻訳出版の意義を説いているのである。始めに企画立案の動機、市場背景などが書かれていて、これは事前に私がM氏と電話で打合せをしたものがベースになっていたのだが、そこまでマジメに書いたり、マジメに論議するようなものなんかじゃないんだよなあ。彼らにしてみると、ビジネスとして、会社の利益としての活動だから、どうしてもそのようなマジメな企画会議をしなきゃならないのだろうけど、その話題が「スラッシュ」であることのギャップがおかしいのなんの。それで、大マジメな口調で、出版した場合の購買層やら売上予想を論議し、結局、その企画が通ってしまったから、さあ大変。
 
すぐにM氏はスラッシャーに連絡を入れて翻訳権の取得交渉に入り、私は翻訳作業に入ったのだった。
 
(つづく)
 
 

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