バカでマヌケでアホなアメリカ人嫌い (8)
2005年7月21日まさか、テレビのニュース番組のトップ・ニュースで「パシフィック・ウェスタン大学」の名前を見るとは思わなかった。ちょっとした驚きだった。ニセ薬「真光元」を製造販売しているカルト「次世紀ファーム」の教祖の学歴として報道された大学だ。少女が死亡した事は非常に残念であり、そのようなカルトには怒りを感じるが、オカルト&カルト・ウォッチャーの私としては別の意味で非常に興味を持って報道を見守っている。
さて、今から25年前の事だが、東京の「特許大学」が摘発される事件があった。大学との名称があるが、その団体は株式会社であり、一切のキャンパスもなく、大学としての実体のない「株式会社 特許大学」だった。そのニセ大学は、本物の大学であることを装おって、ニセの学位を乱発していた件で摘発されたのだ。医学博士、理学博士、工学博士、経済学博士などの30種ほどの学位を全国の1000人を超える人に売り、10億円以上を稼いでいたという。博士になるには、そのニセ大学に論文とその審査料50万円〜500万円を出せばよいらしい。すると、もっともらしい書式の学位認定証書が発行されるという。学位をカネで買えるのであるから、肩書きとしての学位がほしい政治家、開業医、実業家、会社社長、教祖などが群がったのは当然である。勿論、そんな学位が認められるわけがない。そのニセ大学が売っていたのは本物の学位ではなく、同社が登録商標していた「理学博士」、「工学博士」などの商標の使用権だったのだ。(学位を買った人の中には、それが本物の学位だと思い込んでいた人も多かったというのだからアホらしい)
「次世紀ファーム」の教祖が「中央大学卒、薬学博士」の経歴だというのを見て、私のオカルト&カルト・ウォッチャーのセンサーが「ピロリロリン〜!」と鳴ったのだった。中央大には薬学部がない。じゃ、どこの大学で「薬学博士」を取得したのかというと、この手のカルト系の人であると、「特許大学」か、その手の海外の大学しか考えられない。「特許大学」は25年前に摘発されているので、時期的に考えると「特許大学」は無理だろう。だから、アメリカの「パシフィック・ウェスタン大学」(アメリカ版の「特許大学」だ)とか、あるいは「イオンド大学」あたりじゃないのぉ?と思っていたら、見事に「パシフィック・ウェスタン大学」っていうんだから大笑い。やってくれるねぇ、教祖さん!
日本では、前述の「特許大学」のような形態は認められていない。文部科学省が学校教育法に基づいて日本のすべての大学を統括し、同省の認可なくして大学も学位も成立しないのだ。認可がなく、勝手に大学を作ったとしても、その団体が授与する学位には何の価値もなく、何の経歴にも肩書きにもなりえないのだ。クイズ番組の小学生参加の夏休み特番なんかで、優勝者に「ポケモン博士」とか「昆虫博士」、「恐竜博士」、「怪獣博士」の称号が与えられても、それが何ら学位としての意味がないのと同じだ。
このようなニセ学位は、日本では「特許大学」事件以降は根絶されたようであるが、バカでマヌケでアホなアメリカでは、今でも野放しの状態になっている。アメリカは州によって法律が違っており、各州での大学への法整備が揃っていないし、各州の規制の足並みも揃っていない。だから怪しい大学ってのが実に多いのだ。州の法令改正で規制されると、規制されていない他の州に転居する大学も多い。
日本では文部科学省が大学を統括しているが、アメリカではそのような状況になっていないのが怪しい大学が乱立する原因になっている。アメリカでは、日本の文部科学省にあたる「連邦教育局」というのがあるのだが、直接的にそこが大学を統括しているのではなく、そこが認定した団体が大学を公認するという形式になっており、公認団体から公認されている「公認校」と、公認されていない「非公認校」に大別されている。勿論、その「非公認校」に怪しい大学が多いのである。(公認団体それ自体が怪しくて、その公認団体が公認している「公認校」が怪しい場合もある。また、「非公認校」だといってもまともな大学もある。念のため。)
「非公認校」の中には前述の「特許大学」のように、キャンパスが存在しなくて、審査料の名目でカネを出して論文を郵送すると学位を授与してくれるありがたい大学が多く存在する。大学によっては、論文は英語でなくてもよく、抄訳を英文で添付するだけでよいそうだ。(米国の一部の州にでは、そのような「非公認校」の学位を認めていない場合もある。経歴などへの使用も禁止されているのだ。しかし、そのような州は多くはない。また、そのような現状に対しての批判が多いのが、ほとんど改善されることがないまま21世紀を迎えてしまった。)
その代表的なインチキ大学の筆頭が「パシフィック・ウェスタン大学」である。同校は勿論「非公認校」である。今回の「次世紀ファーム」の教祖の学位に関しての同校の見解は、「あれは学位ではなくて名誉称号なのだ」というのだが、それは詐欺をしての言い訳にすぎない。同校は日本の週刊誌などにも広告を載せており、「通信教育で博士号を取得できる」と表記している。また、同校の発行している学位認定証書は「公認校」大学が出している学位の証書とほぼ同じ内容が記載されており、それが名誉称号であることはどこにも書かれていない。
日本人もそうであるが、アメリカ人も肩書きに弱い。「○○博士」だの「教授」のような肩書きを見ると、その人の言っている事や説がさも正しいことだと思い込む人が多いようだ。そのような心理を悪用したのがこのようなニセ大学である。また、そのようなニセ大学からのニセ学位を本物のように悪用するカルトが多い。そんなアホな事に騙されないように、まず始めに疑って考えようではないか。
(つづく)
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