映画嫌い (23)
2006年3月25日本日は2001年の米国の映画「ファイアーウォール」である。
前日の「ゼブラーマン」の件で書いた、中古DVD店でのワゴンセールにて3枚100円の捨て値で売られていた品の、もう1枚がこれなのだ。「ゼブラーマン」が「良い脱力系」だったの対して、こちは「悪い脱力系」だ。とにかくセコい映画なのだ。こんなセコい映画にはめったにお目にかかれない。こ〜いうストーリーは映画化しちゃいけませんよ、こ〜いう演出をしてはいけませんよ・・・ってな悪い例として、中学校の映画クラブ向けの教材になりそうな内容だ。世の中には、いろいろなセコい映画はあるけれど、この映画はセコさにおいて「下には下がある」っていう見本だろうなぁ。セコくて、セコくて、もう、ツッコミどころ満載なんだもの。
そのタイトルから、コンピュータのセキュリティの穴を利用した政府の陰謀を・・・ってのを想像しちゃうけれど、実際にはコンピュータは無関係だ。山火事の映画なのである。「ファイアーウォール」ってタイトルは日本で勝手に付けられたもので、原題は「Inferno」だ。「地獄」って意味だから、山火事のパニック映画として製作されたのだろう。しかし、ぜんぜんパニック映画に見えないおそまつさだ。山火事の様子が全くリアルじゃなんだもの。逃げ惑う市民の姿も出てこないし、炎がおもいっきり人間や建物を飲み込むシーンもありゃしない。逃げる野生の動物の姿も全くないんだけど、あの山って動物がいない死の森なのかねぇ。それで、まるでボヤ程度のセコい火を映して、それが大惨事なんだとさ。消火で出動した山岳消防隊の活動もセコい。隊員が10名そこそこしかいないし、樹木のない所の地面をのんびりと畑を耕すように掘っても意味ないじゃん。まるで火のない焼畑農業だ。ある時は、隊員の1人が落ちている木をチェーンソーでウィーンと切って、それを他の隊員が何もしないでボケ−っと見ているだけだったりする。そんな木を切っても意味ないじゃん。隊員は酸素ボンベさえ背負っていないし、消火剤も使っていないしなぁ。とにかく、山火事の緊迫感なんてありゃしない。そんな山火事なんて恐くねぇよぉ。演出がセコすぎ!
主人公はその街の新任の山岳消防隊の女性隊長だ。この隊長を含めて、登場人物がみんなバカ。アホでマヌケなアメリカ人ばかりで見せられてイライラさせられる。市長もバカで、街の消防団の団長もバカ、主人公の娘もバカ。完全に消火を終えていないのに、隊長がヘリコプターに乗って、ヘリのパイロットとニコニコした表情でどうでもいい雑談をしながら帰ってくるし、市長とノンキに食事しちゃう。それでいて、市長と消防団長に「まだ完全に鎮火されていないから、非難道路の確保を」ってなことを強硬に言い放ち、「フェスティバル中だから、そんなことはできない」と拒否されると、ムッとして席を立ってしまう。隊長も、市長も、消防団長もバカまる出し。新たな山火事が発生しても、隊長は消火部隊の指揮を行なうわけでもなく、「ちょっと家に帰るわ」とか言って、自宅に戻っちゃう。お前、消火の責任者だろ! それで消火活動をサボって、自宅では娘との親子ゲンカである。その醜悪なののしり合いのケンカのシーンを数分間も見せられてしまう。で、娘はボーイフレンドの車に乗って家出しちゃうのだ。アホらしいよなぁ。ようやく隊長が消火活動に復帰したかと思えば、またもやろくに責任者としての指揮を取らない。ヘリコプターに乗って、上空から娘の乗った車が炎に囲まれている(これもボヤ程度なんだが)のを発見し、職務放棄して、娘を助けに行っちゃう。こ〜いう奴を責任者にするなよなぁ。ストリーもセコすぎ!
それで、結局、ダムをダイナマイトで吹き飛ばして、ダムの水を一気に流し、その水で消火するという、ったくもうアホらしくて涙が出てきそうになる作戦になっちゃうのだ。「タワーリング・インフェルノ」のパクリかよ。タイトルもパクリかよ。で、隊長と消防団長がダムに行って、ダイナマイトを仕掛けるのであるが、その場所が全然ダムに見えない。単なる芝生の丘だ。それも、重機も使わず、ツルハシでヨイショ・ヨイショと地面に穴を掘っちゃう。そのダイナマイトの爆発もメチャクチャにセコい。仮面ライダーがショッカーの怪人にライダー・キックをしてドッカーンと爆発するシーンの規模より小さいんだもの。そんなのでダムを壊せるんかい? で、その爆発でダムを破壊したことになっちゃっている。だけど、ダムが壊れるシーンもないし、水がおもいっきり流れ出て行くシーンもない。水がザブーンと火を消して回るシーンもない。あまりにもセコいぞ。水が届かない場所の火はど〜すんだよおぉ?
これでタイトルが「Inferno」ってのは恥ずかしくないんかい? 製作者・監督の頭の中の脳細胞の状態が「Inferno」なんぢゃないのかぁ?
「ファイアーウォール」っていう邦題もヘンテコだ。「耐火壁」の意味で使っているのではないでしょ。耐火壁なんか映画に全く出てこないし、何かを耐火壁にたとえている内容でもない。山火事の炎が壁のようになって立ちはだかるシーンなんてのもない。勿論、コンピュータのセキュリティの用語の「ファイアーウォール」とは無関係だ。
で、セコいのは映画の本体だけではない。日本語字幕までもセコいのだ。セリフの全てを字幕にしていないんだもの。字幕の出ないセリフがありあすぎ。酷い手抜きだ。会話での字幕のセリフが飛び飛びになっちゃっているから、会話が成立していないように見えてしまう箇所もある。字幕だけで見ている人には意味が通じないシーンも多いんじゃなかろうか? こんなにサボった字幕を今までに見た事ないぞ。いくらつまらない映画だからと言っても、やる気がないような字幕を付けるってのは職務怠慢だ。隊長の職務放棄が感染したのかい? その上、誤訳が多すぎ。役者が喋っている英語のセリフの内容と、字幕に書いてある日本語の意味が一致していない。意訳でもないしなぁ。こんな訳をして、お前ら、それでもプロか?
来月から日本で上映される映画に、「ファイアーウォール」というタイトルの、ハリソン・フォード主演の新作があるんだけど、そちらについてはまた別の機会にでも書くことにしよう。そちらはコンピュータのほうの「ファイアーウォール」だ。
厳密に言うと、今回のこの山火事映画は
「ファイアーウォール」
で、ハリソン・フォードのほうは
「ファイヤーウォール」
って、邦題をカタカナで書くと1文字だけ違うんだけどね。
映画「ファイアーウォール」
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00005V1SS/503-0175624-2878342
http://posren.livedoor.com/detail-11203.html
映画「ファイヤーウォール」
http://wwws.warnerbros.co.jp/firewall/
http://firewallmovie.warnerbros.com/
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