映画嫌い (70)
2006年6月5日おぉ〜っと、この映画についても書くのを忘れておった!
ってことで、今回はロシア映画「ナイト・ウォッチ(Night Watch - NOCHNOI DOZOR)」である。日本で劇場公開されるかなり前に私は見終えていたんだけど、あれから結構な時間が経過しちゃった。
すっごく印象が薄い映画だ。わけがわからんストーリーだったってこともあり、ストーリーの詳細をあまり思い出せない。その昔に、光の勢力と闇の勢力が分裂して、その対立と均衡がどうので、その長い対立の歴史の結果、現在に「光vs闇」の決着を・・・ってな事なんだけど、そ〜いう前提が稚拙でしょうがない。光と闇だ、魔法と剣だ、・・・って、テレビ・ゲームのチープな設定のようなものを映画でやっても面白くないよぉ。
この映画の宣伝では、何かと「マトリックス」と「ロード・オブ・ザ・リング」が引き合いにされてるんだけど、それが逆効果になっちゃっている。「マトリックス」並みのアクションだってことを言いたいのだろうが、ほとんどそんなシーンがない。タンクローリーがひっくり返るだけで、それがアクションだと言えるのかなぁ? 「ロード・オブ・ザ・リング」のようなファンタジー大作って言いたいのだろうけれど、さっぱりファンタジーには見えない。宣伝文句では「ダーク・ファンタジー」と表現していて、その暗さから「ダーク」であるのは認めるけれど、これって「ファンタジー」じゃないよなぁ。アクション映画としてもファンタジー映画としても失格なんだよ。この映画も、わけのわからなさと不条理さが「ファンタジー」なんだと勘違いしている人たちによって作られたんだろうなぁ。「ファンタジー」と言っちゃえば、どんな無意味なシーンでも時間稼ぎに使えちゃうもの。あの地下鉄のシーンなんか、ストーリー上は全く意味がないのに、意味ありげに長々とやっちゃって、そのようなストーリーの本筋とは関係ないシーンしか印象に残らないってのは、あまりにもアホらしい。
それで、「ナイト・ウォッチ」も「マトリックス」のような三部作にするってことで、第一部のこれは、光の勢力の戦士が主人公で、その息子が父への敵対心(父としては自業自得ってことなんだけどね)から自分の意志で闇の勢力に加担することを決めるまでのストーリーだ。それをまるでダイジェスト版のようにやっちゃっている。映画でダイジェストやってど〜すんだよぉ。第二部に続くってことで、尻切れトンボで終わらせていいんかい? それで、第二部では親子対決ってことになるんだろうけど、第一部を見て、この続きを見たいと思う人っているのかなぁ? 無駄なシーンをパッチワークにして三部作にしなきゃならなかったってのは、一本の映画の中で表現できなかったという脚本ミスなだけだろ。
で、意外だったのは、この映画がロシア映画ながら、ハリウッド映画のような撮影をやっちゃっている事だ。ロシア語じゃなくて英語で会話されていれば、これがハリウッド映画だと思っちゃう人もいるんじゃないだろうか。ロシアっぽさがほとんどないのである。ロシアでもそ〜いう撮影ができるんだ、って言うよりは、そ〜いう撮影をしなきゃならなかったのかよ?って思ってしまう。ソ連時代の映画が好きだった私としては、このようなハリウッド風のロシア映画を見せられると、複雑な気持ちになってしまうのだ。ソ連時代のタルコフスキー監督の「ストーカー」は、その坦々とした精神世界が素晴らしく、そのような映画って絶対にハリウッド映画じゃできないだろうし、ハリウッド映画が好きな人たちには絶対に理解できない世界観だろうなぁと思うのだが、そのようなソ連・ロシアの映画の素晴らしき伝統が失われてしまうんじゃないかと心配になっちゃう。タルコフスキー監督の「惑星ソラリス」が数年前にハリウッドで醜い改悪リメイクされて「ソラリス」として公開された時の悲しさを、「ナイト・ウォッチ」を見て私は思い出してしまった。
映画「ナイト・ウォッチ」
http://www.foxjapan.com/movies/nightwatch/
映画「ストーカー」
http://www.imageforum.co.jp/tarkovsky/stk.html
映画「惑星ソラリス」
http://www.imageforum.co.jp/tarkovsky/wksslr.html
映画「ソラリス」
http://www.foxjapan.com/movies/solaris/intro.html
私はタルコフスキー監督(故人)の作品が大好きである。タルコフスキー作品で音楽を担当していたエデュアルド・アルテミエフという音楽家も大好きである。アルテミエフ氏は「ソ連・電子音学の祖」として有名で、1980年のモスクワ・オリンピックの開会式の音楽監督でもあり、モスクワ文科大学の名誉教授だ。以前、私はモスクワに行った時に、アポなしでアルテミエフ氏を訪問したことがある。彼の作業場を見学させていただいたところ、Y社、R社、K社、と、ほとんどの機材が日本製だったのが爆笑だった。世界にはびこる日本製機材、恐るべし!
ところで、7年前にラジオ番組でオカルトものを私が担当していた時(前述のアレのこと)、リスナーさんからいただいた手紙の中に、札幌の中学生の女の子からこんな内容が書かれていたやつがあった。
「私の前世はムーン大陸の光の戦士で、名前はミダスでした。一緒に闇の帝国と戦った二人の戦友を探しています。」
ムーン大陸じゃなくて、ムー大陸のことかな?と思うんだけど、それは置いといて、まだ自分が光の戦士だったという事に目覚めていない二人にラジオで呼び掛けてほしいのだそうだ。頭がクラクラする。その手のアニメの見過ぎかよ。「ナイト・ウォッチ」を見て、そんな「光の戦士」のミダスちゃんのことを思い出してしまったのだ。勿論、ラジオ番組では無視して取り上げなかったんだけど、その後、ミダスちゃんは戦友を見つけられたのだろうか? ミダスちゃんが今でも生きていたとしたら、ハタチを過ぎて、合コンとかもやっている年頃だろう。合コンで隣の席の女性がいきなり「私は光の戦士で・・・」って言い出したらイヤだな。
ミダスちゃんはその名前をどこから引用したのだろうか? やはりギリシャ神話なんだろうなぁ。そのギリシャ神話から発生した英語で「Midas touch」ってのがどんな意味なのか知っているかなぁ? ムー大陸ってのは、シャルル・ブラッスールの誤訳と、パウル・シュリーマン(トロイの発掘で有名なシュリーマンの孫だ)による捏造と、ジェイムズ・チャーチワードの嘘の上塗りでデッチあげられたインチキであることに、ミダスちゃんはその後になって気が付いただろうか?
「Midas touch」の意味を知らない人は、お近くのアメリカ人にきいてみてちょ。(ほとんどの英和辞典には載っていないよん)
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