映画嫌い (110)

2006年10月17日
 
今回のデス映画は1998年のフランス・スペイン・ドイツの合作映画「ドン・ジュアン (Don Juan)」である。
 
原作はモリエールの文芸作品だ。17世紀のスペインの伝説の男、ドン・ジュアンの物語りである。「女好き・女ったらし」という意味で使われている「ドン・ファン」という名前の元となった男がこのドン・ジュアンだ。映画の中の会話で使われている言語はフランス語だった。
 
主人公のドン・ジュアン・テオリノは自由気ままな生活をする地方貴族である。
ドン・ジュアンは修道院にいた修道女・エルヴィールを誘惑して妻にした。ところが、ドン・ジュアンは根っからの女好きで、次々に浮気をする。彼にとっては浮気はライフワークのようなものなのだ。その上、彼は無神論者で信仰心が全くない。神を侮辱し、偽善者として世渡りをしている。
彼の召し使いのスガナレルは信仰心が厚い。浮気ばかりして、神を冒涜・愚弄する言動を繰り返す傲慢なドン・ジュアンに対して、スガナレルは強い反感を持っており、時には主人であるドン・ジュアンに戒めの言葉をあびせる。しかし、給料のためだとドン・ジュアンの言う事をきいてしまうのであった。
 
デカい体格の中年おやじ、ドン・ジュアンを演じているのは安岡力也である。
http://okurahoma777.hp.infoseek.co.jp/donjuan1.jpg
いや違った、ジェフ・ダウンズ(ロック・バンド「エイジア」のキーボードの人)である。いや、これも違ったか。ジャック・ウェベールという俳優らしい。
妻のエルヴィールを演じているのは日本でも人気のある女優さん、エマニュエル・ベアールである。きれいな人だね。
http://okurahoma777.hp.infoseek.co.jp/donjuan2.jpg
 
ドン・ジュアンはスガナレルを連れて旅に出た。新たな女を求めての旅だ。ドン・ジュアンは行く先々で女性たちをたぶらかす。妻のエルヴィールを捨てて修道院に戻してしまったドン・ジュアンを、仇討ちをしようとするエルヴィールの兄弟たちの騎士団が追う。
ある時、ドン・ジュアンとスガナレルは船に乗ったところ、悪天候の為にその船が転覆し、ある漁村に漂着したのだった。ドン・ジュアンはさっそくその村で、二人の娘、マチュリーヌとシャルロットに甘い言葉を囁く。
http://okurahoma777.hp.infoseek.co.jp/donjuan3.jpg
マチュリーヌを演じているのは美少女として日本でも人気の高いペネロペ・クルスである。シャルロット演じているのは西村知美である。いや、違った、アリアドナ・ヒルという女優さんらしい。
マチュリーヌも、シャルロットも、その気になっちゃって、それぞれがドン・ジュアンに恋心を持ってしまうのだが、ドン・ジュアンは「ちょっと用事があるので」と馬に乗って出かけて、その村に帰ることはなかった。な〜んだ、マチュリーヌもシャルロットもチョイ役だったんだ。ドン・ジュアンの旅先でのトンデモ浮気の一例としての出演だったんだね。
ある時、ドン・ジュアンとスガナレルは石像を運搬している一行に出会う。その石像とは、以前にドン・ジュアンが殺した貴族の像だった。生前のあの男にそっくりで、かなり大きな像である。ドン・ジュアンはそれを「死人の高望みだ」とバカにし、その像に向かって冗談で「一緒に夕食でも」と言って自宅の屋敷に招待するのだった。すると、その一行は本当にドン・ジュアンの屋敷にやって来ちゃった。
後日、ドン・ジュアンは、石像の設置作業中の、あの貴族の屋敷を訪問する。そして、組立て用の足場に登って頭部の位置まで行くと、彼はその足場から転落し、あっけなく死んでしまうのだった。
職を失ったスガナレルは路傍で物乞いをする身となり、「俺の給料・・・」と呟いて天を仰ぐのだった・・・。おしまい。
 
 
モリエールの原作本を読んだことがないので、この映画が原作に忠実に作ってあるのか、かなりアレンジしてあるのかは不明であるが、めちゃくちゃつまらない映画だなぁ。つかみどころのないこのストーリー、いったいなんなんだろうねぇ? まるで素手でウナギを捕まえようとしている感覚だ。
 
まず、恋多きオヤジ、ドン・ジュアンが、女性に対して何を求めているのかがサッパリわからん。ラヴ・シーンもファック・シーンもありゃしない。漁村でのマチュリーヌとシャルロットへの手の出し方を見る限り、女性のカラダを目当てにしたものではないだろう。女性に甘い言葉を囁く自分の姿に酔いたいのか、あるいは、その言葉に頬を赤らめる女性の表情を見て自己満足に浸りたいのか、その程度にしか見えないのである。ドン・ジュアンの恋心ってそんな偏向したプラトニックなものだったのかねぇ? そんな事の為に旅に出て、そんな事の為に騎士団から命を狙われるのかよ? そんなものだから、かなりチグハグで軟弱に見えてしまうし、かつ、物足りなさを感じてしまう。もっともっと色恋事としてエロエロな内容にしたほうが良かったんぢゃいのぉ?と思うのは私だけであるまい。あちこちに精液が飛び散るような豪快なシーンがあっても良かったんぢゃないのぉ?
 
それにさぁ、あんな野暮ったいオヤジのドン・ジュアンが、なんでそんなに女性にモテちゃうのか?ってのもワケがわからない。甘い言葉を囁くのはドン・ジュアンの勝手なんだけれど、なんで女性たちがそんなドン・ジュアンになびいてしまうんだろうか? ドン・ジュアンが全然魅力的に見えないので、その点がかなり不条理に見えてしまうのだ。
 
ドン・ジュアンとスガナレルの腐れ縁のデコボコ・コンビの表現もかなり中途半端である。無神論者のドン・ジュアンと信仰深いスガナレルの対比のツッコミが手ぬるいのだ。二人の関係をもっとコミカルに表現できたであろうに、それも全くなっておらん。ドン・ジュアンが死んだ後、乞食になってしまったスガナレルってのも、そこだけが妙に現実すぎて不条理に感じてしまう。え?これで終わりかよ?ってな終わり方の映画だもなぁ。この映画の主人公をドン・ジュアンにしないで、スガナレルの視点にして、もっともっとツッコミを入れたものにしたほうが良かったのでは?と思うのは私だけであるまい。
 
ドン・ジュアンのあっけない死ってのもかなり不条理だ。石像の頭部の位置まで足場を登って行ったけれど、そこで足を滑らせた転落ではない。まるで急に何らかの発作が起きたかのように、右手を自分の首にあてて、
「目に見えぬ炎が。耐えられぬ。体中が激しく燃えるようだ。」
とワケのわからない事を言いながら、ふらふらして、それで転落なのである。いったい彼の身に何が起きたのかが見えてこないのだ。神を冒涜していた事にバチがあたったのか、彼が殺した貴族の霊が祟って起きた怪奇現象なのか、何らかの持病(糖尿病っぽいかな?)があってその発作だったのか、さっぱりわからない。彼の死の意味がまるで見えてこないんだもの。だから、この映画は全くつかみどころのないまま終わってしまっているのだ。
 
ってことで、この映画のデス度も星5個。
★★★★★
 
 
映画「ドン・ジュアン」
http://us.imdb.com/title/tt0123808/
http://members3.jcom.home.ne.jp/borm/data16/020014.htm
モリエール「ドン・ジュアン」
http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/32/7/3251230.html
安岡力也
http://www.nagarapro.co.jp/rikiya/rikiya_index.htm
ジェフ・ダウンズ
http://www.geoffdownes.com/
西村知美
http://www.tororin.com/
 
 

 
ちなみに、私も無神論者だ。放蕩の趣味もある。しかし、浮気癖はないぞ。
 

 

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