映画嫌い (145)

2007年2月3日
 
本日のデス映画は、2006年のスペイン映画「パンズ・ラビリンス (Pan’s Labyrinth)」だ。スペイン語の原題は「El Laberinto del Fauno」だ。今年の秋に日本でも劇場公開されるらしい。
 
以下がストーリーの概要である。
 
1944年のスペイン。第二次世界大戦中に勃発したスペインの内戦が終結し、フランコ将軍の独裁共産主義政権が発足した。
森の中に潜伏している反共産主義のゲリラを制圧する為に、軍隊はその近くにある製粉所に拠点を置き、冷徹なヴィダル大尉が独裁者として指揮をとっていた。
 
主人公は少女・オフェリア。
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オフェリアは内戦で父を亡くし、母はヴィダル大尉と再婚したのだった。
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大尉の子を妊娠して臨月になった母に連れられて、オフェリアは大尉の滞在している製粉所を訪問する。しかし、オフェリアは大尉に嫌悪感を持ち、父とは認めたくなかった。
その夜、オフェリアの元に妖精が現れた。妖精の導きによって、オフェリアは製粉所の裏山にある迷宮にたどり着く。そこには迷宮を守る牧羊神・パンがいた。
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パンはオフェリアのことを地下王国のプリンセスだと言う。プリンセスのしもべであるパンは、いつの日にかプリンセスがここへ帰ってくるのを待っていたと。そして、オフェリアが本当にプリンセスであるか真偽を確かめるために、パンは三つの危険な試練をオフェリアに与える。月が満ちる前にその三つの試練をクリアしなければならないとパンは言うのだ。
ひとつめの試練は、森の中の巨大イチジクの木の中に巨大ヒキガエルが住んでいるので、そいつに魔法の石を三つ飲ませて、その腹の中から金の鍵を取り出し、イチジクの木を救うというものだった。オフェリアはそれに成功したが、その次の試練では、何も食べてはいけないという注意事項に従わなかった為に失敗してしまう。すると、パンは「もう二度と会うことはない」と言って去って行った。
一方、オフェリアの母は男の子を出産したが、母はその時に死んでしまうのだった。
 
ゲリラの活動が激化する中、残されたオフェリアは軍隊とゲリラの抗争に巻き込まれて、大尉の命令により製粉所の中の部屋で監禁状態となる。そこへパンが現れた。
「あなたに賭けてみることにした。これが最後のチャンスだ。」
とパンは言う。そして、オフェリアに赤ん坊の弟を連れて迷宮に行くように指示した。オフェリアは監禁されている部屋から脱走し、大尉の部屋に忍び込み、赤ん坊を抱きかかえて逃げる。大尉は銃を持って迷宮までオフェリアを追ってきた。迷宮で待っていたパンは、地下王国への扉を開ける為には赤ん坊の血が一滴必要だと言う。オフェリアはそれを拒否して、最後のチャンスも失ってしまい、パンも消えてしまうのだった。そこへ大尉が現れた。大尉はオフェリアから赤ん坊を奪い返し、オフェリアを銃で撃ち抜く。血が溢れ出た。
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迷宮から出てきた大尉はゲリラの一団に囲まれてしまい、大尉は赤ん坊をゲリラに渡した後に射殺されてしまう。
 
意識が薄れていくオフェリア・・・・。
気がつくと、そこは地下王国の宮殿の中だった。
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王様の席に座っていたのは亡き父だった。そして父は言う。
「幼子の血を差し出すよりも、お前は自分の血を差し出した。それが最後の試練で、最も重要な事だったのだ。」
そして、オフェリアはプリンセスとして迎えられた。
・・・そんな夢を見ながら、オフェリアは暗い迷宮の中で息絶えてしまうのだった。
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おしまい。
 
 
こ〜いうストーリーだった。すっごくつまらない。めちゃくちゃ胡散臭い。
この映画、ゴールデン・グローブ賞やアカデミー賞にノミネートされていたし、その他のいろいろな賞を獲得しているものだから、期待して見ていたんだけど、なんなんだぁこりゃ〜。
子供を主人公にした、夢みる子供たちへ贈るメルヘン&ファンタジー・・・ってな感じに思われるかも知れないけれど、カビ臭くて暗いし、生臭い軍隊対ゲリラの抗争があったり、捕らえたゲリラへの残酷な拷問シーンがあったりして、子供向けってのもなんだかなぁ・・・ってな内容の映画なのだ。かといって、オトナが見るにしてもこんな幼稚でガキっぽいストーリーはなんだかなぁ・・・である。そんなものだから、この映画って、どんな観客をあてこんだ映画なのかわからないし、この映画って誰に何を言いたい映画なのかもさっぱりわからないのだ。無理矢理と「迷宮」とか「パン」とかをひっぱり出してのエセ・ファンタジーとしか思えない。「パン」ってギリシャ神話に出てくる神じゃないか。ヤギのツノと足をもったやつだ。なんでギリシャ神話の神が地下王国と関係しているのかさっぱりわからん。迷宮の管理人がもしもウルトラマンだったら笑っちゃうでしょ。なんでウルトラマンが迷宮の管理人なんだよぉ!って。それと同じように、迷宮の管理人がギリシャ神話のパンだってのがバカバカしいほどにミスマッチなのである。そのヘタクソな着ぐるみのパンのダサさにも失笑だ。この安っぽさがこの映画をますますチープなものにしちゃっている。
 
私が見たやつはスペイン語原版に英語字幕を付けたやつだった。最後のシーンでオフェリアが迷宮で死んでしまった後に、スペイン語でナレーションが入るんだけど、それには字幕が付いていなかったのだ。だから、スペイン語がわかる人だけにしかそのナレーションの意味がわからない仕組みになっていたのだ。
私はちょっとだけスペイン語がわかる。それを要約すると、こんな内容のナレーションだったのだ。
「プリンセスは王様の元へ戻り、長い世代に渡ってこの国を平和に治め、国民に愛された。彼女が地上でほんの少し残してきたものは、どこで会えるか知っている人だけが見る事ができるのだ。」
おいおい、プリンセスになったのは夢ではなくて本当のことだったんかい! オフェリアは死んだのじゃないんかよ! スペイン語がわからない人にはそのことを教えてくれないんかい!
確かに、「オフェリアはプリンセスになりましたぁ、めでたし、めでたし」で終わっちゃうのはダサい。オフェリアがプリンセスになる夢を見ながら死んでいったことにしたほうがゴシックな美があるし、ファンタジー度は上がる。「マッチ売りの少女」の最期に通じるものがある。しかし、臭いものにはフタのように、あの最後のナレーションの字幕を付けずに隠蔽するってのはけしからんな。もしも、このナレーションがちゃんと翻訳されて字幕になっていたら、この映画の評価も変わっていたのではなかろうか? ゴールデン・グローブ賞やアカデミー賞にノミネートされることもなかったのでは?
 
 
映画「パンズ・ラビリンス」
http://www.panslabyrinth.jp/
http://www.panslabyrinth.com/
 
 

 
その後、米国での公開版は、最後のナレーションに字幕が付くバージョンに差し換えられたらしい。案の定、評価はボロクソのようだ。
 
で、ゲリラの手に渡った赤子(オフェリアの弟)はどうなったんだ? ゲリラに育てられて、ゲリラのリーダーにでもなったのだろうか? 1970年代半ばにフランコ将軍の死去によって独裁政権は崩壊したのだが、それに何らかの影響を与えたのだろうか? 1944年生まれってことは、今でも生きていたら62〜63才だな。
続編の「パンズ・ラビリンス・2」ってのを作るとしたら、ゲリラの青年の前にパンが現れて、「あなたは地下王国のプリンスだ」とか言われちゃうとか?
 

 
 

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