映画嫌い (191)
2007年7月27日本日のクズ映画は2007年の邦画「ドルフィン・ブルー」である。サブ・タイトルが「フジ、もういちど宙へ」だ。「宙」と書いて「そら」と読まなければならないそうだ。余計なお世話である。
岩貞るみこ著「もういちど宙へ」をベースにした実話の映画化である。
沖縄チュラウミ水族館に赴任してきた獣医の上村一也が主人公である。
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上村はイルカ・ショーのイルカの飼育と健康管理を担当することになった。20頭のイルカの面倒を見る忙しい毎日だ。そんな中、フジという名前のイルカが原因不明の感染症にかかり、尾ヒレが先端部分から壊死してきたのだ。フジの命を救う為に、壊死した尾ヒレの部分を切断しなくてはならない。
フジは泳げなくなるかも知らないが、フジの命を救うためだ・・・と、切断手術が行なわれた。
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その後、フジの体調は元に戻り、感染症の心配はなくなったが、尾ヒレを失っている為に、フジは泳ぐことができない。水の上に浮かんでいるだけだった。
泳げないフジを遠くから見守る、近所に住んでいる謎の子供、ミチル。
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ミチルは心に傷を持った子供だった。
上村はフジにゴム製の人工の尾ヒレを装着させるという案を持って、東京のブリジストン本社を訪問する。そして、ブリジストンの協力で、世界初のイルカ用人工尾ヒレの開発が始まった。失敗と改良を重ねて、遂にはフジは人工尾ヒレでジャンプできるようになる。
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イルカを救うという美しい実話に見える人もいるだろうが、なんだかボケちゃっているんだよなぁ。イルカを水族館の狭い水槽に拉致監禁しておいて、イルカ・ショーだなんて動物虐待に近い行為をやって、それでいてイルカを救うだなんて、人間の傲慢さ丸出しじゃないか。こんなエセ・ヒューマニズムには吐き気がするぞ。
この映画にも、邦画では毎度毎度の、ストーリーとは無関係の時間稼ぎ用の意味のないシーンがいっぱいあって、メインのストーリーが貧弱なものだから、ますます貧弱さと散漫さが増幅されちゃっているのだ。冒頭で上村が自転車で走るシーンを5分弱も見せられちゃうんだけれど、これ、何も意味のないシーンでしょ。上村の彼女との事も出てくるんだけれど、これも何も意味がない。全部、バッサリとカットしちゃったほうがスッキリするのになぁ。謎の子供、ミチルの件もストーリー上、何の意味もない。これも全部カットすべきだな。
そんな無駄なシーンが多いくせに、イルカ飼育員の苦労についてはすごい描写不足なのだ。パワーの配分のミスだぞ。人工尾ヒレを装着したら泳いだ、ジャンプした、単にそれだけにしか見えないんだもの。上村とイルカとの関係ではなくて、上村と飼育員のつまらない人間関係のほうを見せちゃっているしなぁ。そんなつまらないものを見せる必要なんかどこにもないってば。
で、それまで男なのか女なのか微妙に見えていた性別不明のミチルが、最後のほうのお別れシーンで、花柄のワンピースを着ていた。あぁ、ミチルって女の子だったんだぁ・・・とここで判明。
それでも、男の子がワンピースを着て、そっちの世界にはまっちゃっているあぶない子供・・・に見えてしまうのは、私だけであるまい。
最もこの映画で物足りなく見えるのは、ブリジストン側の開発に関する苦労話が見えてこないってことだ。イルカの尾ヒレをゴムで制作するなんて前例もないだろうから、材質的・強度的にも研究の余地は多大にあっただろうし、水の抵抗を流体力学的に研究する必要もあっただろう。そのようなノウハウの蓄積、研究開発には莫大な時間と費用がかかったであろうし、開発担当者が沖縄を訪問したりして、旅費・人件費もかなりのものだろう。そのようなブリジストン側の問題とその解決がほとんど見えてこないのである。
それにしても、みんな、演技がヘタだよなぁ(館長以外)。演技がヘタな上に、人物描写が貧弱なものだから、こ〜いう映画って、誰にも感情移入できないのだ。他人事にしか見えない、そ〜いうクズ映画なのさ。だから私は邦画が大嫌いだ。
映画「ドルフィン・ブルー フジ、もういちど宙(そら)へ」
http://www.dolphin-blue.com/
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