映画嫌い (193)
2007年7月29日本日のクズ映画は2007年の邦画「バブルへGO!! タイムマシンはドラム式」である。
1990年3月30日、大蔵省(当時)金融局の局長・芹沢は「不動産取引融資の規制」の通達を発表した。これを機に日本のバブル景気は一気に衰退し、終焉を迎えたのだった。あれから17年が過ぎた。
2007年3月、主人公の田中真由美、22才は多額の借金を抱え、借金取りに追われながら、キャバクラで働いていた。
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真由美の母である真理子は東大卒で、某電気メーカで家電製品の研究の仕事をしながら、未婚の母として女手ひとつで真由美を育てあげたのだった。
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真理子はある時に職場で研究していたドラム式洗濯機が偶然とタイムマシンの機能を持ってしまったことに気がつく。
一方、真理子とは東大の同級生で、現在は財務省に勤務している下川路という男がいた。
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下川路の研究チームはこのままでは2年後に日本の財政は破綻してしまうという予測を得て、真理子のドラム式タイムマシンを使って、なんとか1990年にバブル景気を終わらせないようにするという計画を立てた。バブルを終わらせない為には、芹沢の「不動産取引融資の規制」の通達の発表を中止させるれば良いと。そこで真理子は自らタイムマシンを使って1990年3月に行く。ところが真理子は1990年に行ったまま失踪してしまう。
下川路は真由美に接近してきた。そして、事の経緯を告げ、真由美に1990年3月に行くように要請する。母・真理子を探し出し、そして芹沢の通達の発表を中止させるのが目的だ。真由美は同意してタイムマシンに乗り込む事になる。
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そして1990年3月に。
そこはボディコン姿、太い眉毛のメイクでMC・ハマーの曲をディスコで踊る、バブリーな時代だった。
真由美は大蔵省に勤務する若き日の下川路に合うが・・・。
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タイトルにある、タイムマシンがドラム式の洗濯機だってのが象徴し、それで想像がつくように、ナンセンスさをメインにしたコメディである。しかし、薄っぺらなコメディで、笑える部分がひとつもなかった。三流芸人の前座のコントを見せられているような感覚なのだ。現在とバブル期の金銭感覚のギャップやファッションなどの違いをありきたりに見せているだけで、うまくギャグにしているとは思えないし、真由美が歴史を変えてしまうことの重要性も何もわかっちゃいないまま1990年で好き勝手に行動する姿には、ギャグ以前に基幹となるストーリーへの疑問でいっぱいになる。真由美は下川路の娘だった!という一種のサプライズをやっちゃっているのだが、それですら見ている側からすると早くから簡単に想定できちゃって、全然サプライズになっていない。真由美自身がその事実を知ってもほとんどサプライズしていないのもヘンテコだな。1990年で歴史を大きく変えてしまって、それで2007年に戻ってくると、下川路が総理大臣になっているってのは、ストーリーのかなりの暴走だ。
この映画が面白くない理由のひとつには、下川路を演じる役者に阿部寛を起用しちゃっているところだろう。どんな役をやらせても同じになってしまう、あれしかできない役者なんだもの、この映画でもいつものデクノボーなあれでしかない。例えて言うならば、ドラマ「トリック」において阿部寛が演じていた上田次郎教授とこの映画における下川路がほとんど同じパターンなのだ。単に相手役が仲間由紀恵から広末涼子に替わって、母が野際陽子から薬師丸ひろ子に替わっただけにしか見えてこない。「トリック」がメインのストーリーをほとんど無視したままナンセンス・ギャグの小ネタの応酬をやっているだけ、笑いという観点からは「トリック」のほうが面白いのだ。
それにしても、こっちの映画の小ネタのセンスは面白くない。1990年で、ディスコで飯島愛(本人役で登場している)を見かけた真由美が「本、書いたらすっごい売れるから」と教えたり、ラモス瑠偉(これも本人役で登場)を見かけて、「ドーハのワールドカップの予選の時、ロスタイムのコーナー・キックに気を付けて」と教える、そ〜いうのってレベルが低くて笑えない。2007年に戻ってみると、ラモス瑠偉が「ドーハの英雄」ってな事になっていて、日本代表の監督になって「ラモス・ジャパン」を率いているってなオチがあるんだけれど、こ〜いうのって面白いかなぁ?
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ところで、この映画の原作はホイチョイ・プロダクションである。週刊マンガ誌「ビッグ・コミック・スピリッツ」にバブリーな4コマ漫画「気まぐれコンセプト」を掲載している集団だ。私は今となっては「ビッグ・コミック・スピリッツ」は読んでいないんだけれど(以前は読んでいた。原律子、相原コージ、吉田戦車の4コマ漫画が掲載されていた時代だけどね)、「気まぐれコンセプト」って今でもやっているんだよねぇ? バブルの前から始まって、その時代の世相を反影しながら、もう20年以上も続いているんだなぁ、ある意味では凄い。この映画の監督は、そのホイチョイ・プロのリーダーである馬場康夫だ。あのバブル期には「私をスキーに連れてって」、「彼女が水着に着替えたら」などのおもいっきりバブリーな映画を監督・制作していたってのが笑える。そんなバブル時代に最も思い入れがあるのが馬場康夫をはじめとするホイチョイ・プロの面々だろう。タイムマシンでバブル期へ行くこんな映画を作るとは、因果なものだなぁ・・・と苦笑しちゃうぞ。
ちなみに、馬場康夫は日立製作所の元・社員である。退社してホイチョイ・プロでの活動をしながらも、日立との縁は続いていて、日立からの依頼があって、「気まぐれコンセプト」のノリでの日立の会社案内のパンフレットをマンガで作っていたこともあった。そのパンフは日立への就職を希望する大学生などに配布されていたのだけれど、日立の社内では賛否両論で、一部が回収されるという騒ぎにもなった。
そんな日立との関係の為なのか、この映画に出てくるドラム式洗濯機は日立製だ。
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そのドラム式洗濯機が置いてあるのが日立の家電研究所だ。
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財務省の研究室のシーンでは、日立のパソコン「フローラ」の箱まで見せている。
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しかしながら、日立の社内でのシーンがヘンテコでありえないようなシーンばかりなのだ。日立の機密に関わることもあるから、詳しくどこがどのようにありえないのかはここに書かない。かなり現実とは違っているってことだ。(なぜ、私にそれをわかるかって言うと、実は私、以前に日立の社員だった事がある。だから、内部事情は良く知っているんだもの。給料がバカみたく安いからすぐに辞めたけどな。なんであんな安い給料で日立では暴動が起きないのだろうか?)
ちなみに、1990年には日立では洗濯機にファジー理論を取り込んだファジー洗濯機を開発して、それを発売していた。ファジー理論はあの時代のちょっとしたバブリーなブームであったけれど、結局のところ、ファジー理論って空理空論でしかなく、すぐにすたれてしまった。あの洗濯機にしても「いったいこれのどこがファジーやねん!」ってなマガイモノでしかなかったのだ。日立って、そんなトンデモ製品をやっちゃうんだよなぁ。何年か前には、日立はパソコン用ディスプレイからマイナスイオンが出てくるってな製品を出していたこともあったでしょ。そもそもマイナスイオンってのがオカルト、非科学的な都市伝説の一種でしかないんだがなぁ。この世にありもしないマイナスイオンが出てくるってのは詐欺だぞ、日立!
映画「バブルへGO!! タイムマシンはドラム式」
http://www.go-bubble.com/index.html
関係ないけれど、この映画には、こんな悲惨なシーンもある。
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