映画嫌い (199)

2007年9月30日
 
本日のトホホ映画は1973年の米国映画「エクソシスト (The Exorcist)」である。
 
悪魔に取り憑かれた14才の少女・リーガンと、その悪魔を祓おうとするエクソシスト(悪魔祓い師)の神父の死闘を描いた映画である。現在のホラー映画の原点と言える映画で、1973年の公開時には世界的に大ヒットし、社会現象にもなった。悪魔というものの存在が信じられているキリスト教社会の米国では、この映画を見ての失神者が続出。そんな「恐いぞ!」という噂が伝わってきて、日本でも鳴り物入りで劇場公開されたのだが、ちっとも恐くなくて、日本では誰ひとりとして失神しなかったのだ。内容も稚拙で、しょうもないトホホな映画だった。なんでこんな映画で米国人って失神するんだ?ってな批判が日本では続出し、日米の価値観・宗教観の違いを述べる学者さんがマスコミに登場したりしていたっけ。日本で劇場公開されたやつは恐いシーンがカットされた検閲版だという噂まで流れた。勿論、あれは検閲版ではなかったのだが。
 
そんなアホらしい映画だったのだが、この映画によって、悪魔って人間に取り憑くものである事と、エクソシストなる悪魔を祓う専門家が現代の米国に存在することが日本でも知られるものとなり(現在でもバチカン公認の悪魔祓い師は欧州に200人もいるらしい)、1970年代の日本でのオカルト・ブームを牽引するものとなった。漫画「恐怖新聞」がヒットし、ユリ・ゲラ−が来日したり、こっくりさん、スプーン曲げ、UFOを呼ぶ集会、オリバーくん、口裂け女の都市伝説、映画「オーメン」、・・・と、今となっては懐かしくて、とてつもなく下らないオカルト・ブームだったなぁ。結局、オリバーくんは単なる猿だったし、超能力なんか全くない私にだってスプーンはそれっぽく簡単に曲げられる。UFOを呼ぶ集会が夜空に念力を送ってその場に現れた光点って、雲の間から見えた金星だったわけだ。翌日にも同じ時刻に同じ場所に見えた!ってのは笑っちゃう。それって金星だもの、当たり前だ。空に念力を送って、それをキャッチした宇宙人って、「おぉ、また喚ばれちゃったなぁ。ちょっと行ってくるかぁ」ってな具合でUFOに乗って飛行するようなヒマな奴らなんだろうか?

映画「エクソシスト」の原作者・ウィリアム・ピーター・ブラッティはこの映画は実話だと言い張っている。1949年の新聞に掲載された悪魔祓い事件の記事を読んだ若き日の彼は、いつまでもその事件を忘れられず、それから20年後になって、当時の悪魔祓い師が記録していた日誌のコピーを入手し、それを元に1971年に書かれたのがこの映画の原作だと言う。
ところが、米国のオカルト研究家が執拗な追跡調査をしたところ、かなり事実とは異なっている事が判明したのだ。映画では14才の少女ということになっているが、実際には13才の少年だった。悪魔祓いが行なわれたのは坂の上の自宅ではなく、病院の病室だった。神父が死んだりしていないことも判明している。当時に悪魔祓いの助手をやった人も判明しており、その人物へのインタビューによると、少年は悪魔のような声で汚い言葉を喋ったり、汚物を吐いたりなんかしていない。単に、ラテン語を真似たような言葉をちょっとだけ喋ったにすぎないものだったのだ。少年がこのような状態になったのは、この事件の直前に最愛の叔母が亡くなっていて、そのショックによる心因性人格障害であると考えられている。少年には親しい友人がいなくて、彼の唯一の理解者が叔母だった。そんな叔母はオカルト大好きおばちゃんで、彼にウイジャ板(西洋版こっくりさん)の使い方を教えるなどしていて、幼少期から彼もオカルトにどっぷりと浸かっていたようだ。
ってなことで、映画「エクソシスト」は事実の映画化ではなくて、心に傷を持ったオカルト少年の話を誇張して悪魔のせいにしたものだったのだ。そのような意味でも、この映画はトホホだったのさ。

ちなみに、映画「エクソシスト」のテーマ曲に使われているのは、英国人ミュージシャン、マイク・オールドフィールドの「チューブラー・ベルズ」である。監督のウィリアム・フリードキンがこの曲を気に入って、マイク・オールドフィールド本人のバージョンを使いたかったが、版権の問題で本人バージョンが使えず、米国で録音した別バージョンが映画で使われている。
映画「エクソシスト」のヒットも手伝って、マイク・オールドフィールドの「チューブラー・ベルズ」も世界的なヒットを記録する。本国の英国ではヒット・チャートのトップになるほどだ。このレコードの発売元は、発足したばかりの英国の小さなレコード会社「ヴァージン」だった。「ヴァージン」の第一作目としての発売で、いきなりトップである。「ヴァージン」はその後のマイク・オールドフィールドの作品もヒットさせ、プログレ、パンク・ロック、ニュー・ウェーヴ系のバンドのレコードを多数を世に出して英国有数の企業へと大成長することになる。経営者は気球横断飛行男としてその道楽ぶりでも知られるあのリチャード・ブランソン(彼の自伝書のブ厚い翻訳本を時々、古本屋で105円で売られているのを見かける)である。ブランソン率いる「ヴァージン」は各国にレコード・チェーン店「ヴァージン・メガストア」を作り日本にも進出してきたし(札幌のメガストアは数年前に潰れたっけなぁ)、航空会社「ヴァージン・アトランティック」まで作り、欧州では清涼飲料「ヴァージン・コーラ」を販売している。「ヴァージン・コーラ」も日本進出してきたが、結局はほとんど売れず、話題にもならず、すぐに撤退してしまう。その後、日本の「ポッカ」と業務提携して再進出を計るが、これも大失敗に終わるのだった。あれ、おいしくないものね。
 
 
映画「エクソシスト」
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=2823
マイク・オールドフィールド「チューブラー・ベルズ」
http://www5e.biglobe.ne.jp/~garasudo/Revue.114.html
http://mo-retsu.jp/ff/mike_oldfield.htm
リチャード・ブランソン
http://www.virginatlantic.co.jp/virgin/group/index.php
 
 

 
「チューブラー・ベルズ」をマイク・オールドフィールドのデビュー作と言うのは実際には正しくない。その数年前に彼は姉のサリー・オールドフィールドとのコンビの「サリアンジー」というユニットでレコード・デビューしているからだ。彼がソロとなっての第一作目が「チューブラー・ベルズ」である。姉のサリー・オールドフィールドもその後はソロのアーティストとして活動している。
 
「チューブラー・ベルズ」の発売当時のスタジオ・ライブを撮影したプロモーション・フィルムをここで見る事ができる。
Tubular Bells - Part 1
http://www.youtube.com/watch?v=4Q-YH0QLhcM
Tubular Bells - Part 2
http://www.youtube.com/watch?v=PVZJ6i8CZDI
Tubular Bells - Part 3
http://www.youtube.com/watch?v=hDthqGu0FqM
ベースを弾いているのがマイク・オールドフィールドだ(途中でギターに持ち替えたりしている)。その他のミュージシャンの顔ぶれが凄いのなんの。ゴングのスティーヴ・ヒレッジ(毛糸の帽子をかぶったギターの男だよ)とピエール・モエルラン(パーカッションの人)、ソフト・マシーンのマイク・ラトリッジ(ピアノの人、深町純とは別人だ)とカール・ジェンキンス、ヘンリー・カウのフレッド・フリス(白いセーターを着たギターの男)、ローリング・ストーンズのミック・テイラー、他・・・。失禁ものだ。
 
このヒット曲もマイク・オールドフィールドの作だ。
Mike Oldfield - "Moonlight Shadow"
http://www.youtube.com/watch?v=41whX9vT3Lk
隣りで歌っているおばちゃん、マギー・ライリーって名前の人なんだけれど、すっごく優しくていい声しているんだよねぇ。私はこの人の声のファンだなぁ。左でタンバリンを叩いている男はサイモン・フィリップスだね。
 
ちなみに、私はマイク・オールドフィールドに会ったことがある。若い金髪のおねぇちゃんが大好きな男だ。彼の頭の中の半分はおねぇちゃんの事なんだろうな。それに、かなり偏屈でイヤミな男なのだ。言葉の節々にトゲがあるんだもの。あまりお友達になりたくない人物である。(あまり使われない古い言い回しの英語を会話の中に入れて彼は私に話してきたんだけれど、あれは私がそれを知らないと思ってのイヤガラセ行為だろうなぁ。残念でしたねぇ、私はその英語の言い回しをちゃんと知っているんだもの。)
 
続きは ヒミツの日記 に記述。
 

 
 
 

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