映画嫌い (287)

2008年7月9日
 
本日のカス映画は2008年のロシア映画「12人の怒れる男 (12 Angry Men)」だ。1957年の同名の米国映画をリメイクしたものである。この映画は日本でも来月あたりから劇場公開されるらしい。
 
個人的には「12人の怒れる男」の英語の原作本が懐かしい。私が大学1年生の時、大学の英語の講議でのテキストがこれの英語の原作本で、半年かけてひたすらこれを和訳して読んでいくってのがその講議だったのだ。単位認定の試験では、その本の感想を英語で書くというものだったなぁ。私はその感想文で、その本をめちゃくちゃ批判したっけ。だって、凄くバカらしいストーリーで、全然面白くないんだもの。
 
スラム出身の青年が父を殺したという容疑で逮捕され、裁判となった。米国での裁判は、一般市民の中から選ばれた12人の陪審員が全員一致の原則にて判決を下すというものだ。容疑者の青年にとっては不利な状況証拠があり、当初は11人の陪審員は容疑者を有罪だと思っていて、陪審員の中には早いとこ終わらせて仕事に戻りたいと思っている無関心派もいたりする。ところが、ひとりの陪審員が容疑者の犯行である事に懐疑的な意見を主張して孤立する。1対11だ。意見が対立しながらも、次第にその懐疑論に陪審員たちは同調していき、2対10、3対9、4対8、・・・となり、陪審員が最終的に下した判決とは・・・。
こんなストーリーなのだが、もぅ、できすぎな幼稚なストーリーがアホらしいのだ。ドラマティックな展開を読ませたいという作者の魂胆が見え見えで、そのヤラセっぽい展開に失笑だった。いかにも人為的に創作された安っぽい茶番なのである。
 
これが1957年に映画化されていたのは知っていたが、私はそれを見る機会がなかなかなくて、初めて見たのは大学を卒業した後だったなぁ。深夜にテレビで放送されていたやつだった。原作に忠実な映画だったけれど、みょ〜に暗くてイヤだったなぁ。懐疑論を主張するあの陪審員を救世主的なヒーローのように描写しているのにも嫌悪感があったしなぁ。原作が悪いものだから、勿論、その映画も面白くないのだ。
米国の陪審員制度をパクった「裁判員制度」が日本でも始まるってことで、米国での陪審員制度がこのようなものだという例として紹介されるのがこの映画なんだもの、困っちゃうよなぁ。
ちなみに、これの演劇版のシナリオ本が市販されていて、これの劇を舞台で演じる劇団が日本国内にもいくつかある。なんでこんな劇をやっちゃうんだろうなぁ? そんなバカ芝居を見てもしょうがないじゃないか。
 
それで、あの米国映画「12人の怒れる男」から50年を経て、なぜかロシアでリメイクされちゃったというのが、今回の映画、ロシア版「12人の怒れる男」である。
原作のダサさをうまく解消してくれているのかなぁ?と思って見てみたんだけれど、あきれた事に、それに逆行したバカ映画になっちゃっているんだもなぁ。これはリメイクとかアレンジとかじゃなくて「改悪」行為だ。どんな改悪かと言うと、舞台を現在のロシアに置き換えちゃっているのだ。原作ではスラムの青年が被告だったのに対し、この映画の被告はチェチェン出身の紛争孤児の少年だもの。現在の混迷するロシア社会への批判をストーリーに絡めちゃっているのだ。そんなのを2時間40分もの長さでダラダラと見せられてしまうんだもの、こりゃプチ拷問だな。陪審員たちの人間性が衝突する人間ドラマとしても薄すぎるし、米国版より審理が甘くて、懐疑的推理の説得力も弱い。すなわちデキソコナイのリメイクになっちゃっているのだ。こんなひどいリメイクがまかり通っちゃうのが現在のロシア社会の歪みなんだろうね。ってことで、時間の無駄だから、こんな映画は絶対に見るんじゃないよ。
 
 
映画「12人の怒れる男」
http://www.12-movie.com/



 

 
 

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