映画嫌い (383)

2009年2月27日 映画

本日のクズ映画は2008年の米英合作映画「ブーリン家の姉妹 (The Other Boleyn Girl)」である。日本では昨年の10月に劇場公開されていた。16世紀のイングランド国王・ヘンリー8世の2番目の妻となるアン・ブーリンの物語を、アンの妹であるメアリーとの関係を軸に映像化したものだ。
 
新興貴族のブーリン卿には3人の子供がいた。長女のアン、次女のメアリー、そして末っ子は男のジョージだ。ブーリン卿は商人のケアリー家から縁談をもちかけられ、長女のアンではなく、次女のメアリーを嫁に出した。ちょうどその頃、国王ヘンリー8世の王妃キャサリンが死産してしまい、世継ぎがいない事をヘンリー8世は悩んでいたので、ブーリン卿はアンをヘンリー8世に差し出し、自分の地位の向上を計ろうとしていた。ところが、ヘンリー8世はアンではなくメアリーを気に入ってしまう。メアリーが結婚したばかりである事を知りながら、ヘンリー8世はメアリーとアンを王宮に招き、王妃の世話係として住まわせ、メアリーを愛人にしてしまうのだった。そしてメアリーはヘンリー8世の子供を身籠り、やがて男の子を出産したが、その頃にはヘンリー8世の心はアンに傾いていたのだ。メアリーは赤ん坊を抱いて王宮から出てしまう。赤ん坊は私生児として育てられた。
野心家であるアンはヘンリー8世からの度重なる求愛に「じらし」た態度を取り、王妃との離婚を迫るのであった。その企てに成功し、ヘンリー8世は王妃を追放して離婚。アンは正式に王妃の座に付く。これで男の子が生まれれば万々歳。しかし、アンが産んだ子供は女の子だった。非常にあせるアンは自滅していく。ヘンリー8世の元には新たな愛人・ジェーン・シーモアが。
(中略)
反逆罪として有罪になったアンの死刑が執行されるのだった。おしまい。
 
ヘンリー8世は現在の本国のイギリス人にとっても人気の高い国王だ。学芸の奨励をし、政治的にも様々な民主的な改革を行ない、その治世で国力も増した。しかし、その私生活は波乱万丈で、生涯に6人の妻を迎えている。最初の妻であるキャサリン(6人の妻の中、3人の名前が同じくキャサリンだったので、混同しないように、最初の妻は一般的に「アラゴンのキャサリン」と呼ばれている)の離婚に対しては、教儀で離婚を禁止しているローマ法皇と対立し、その後にローマ法皇と絶縁してイングランド独自のキリスト教教会が設立されるに至っている。それが現在でも続いている英国・国教会の始まりである。そのような、英国の歴史のターニング・ポイントにいたのがアン・ブーリンだ。だから、アンの物語は今までに何度か映画化されており、「1000日のアン」ってなよくできた映画もあったのだ。1000日とは、アンが王妃になってから処刑されるまでの日数である。

さて、この映画であるが、史実とは認められていない寓話が付加されちゃっていて、それで誤解される部分もあるだろうが、そのへんは事実を元にしたフィクション映画のそれだと割り切って見ても、ヘンリー8世の威厳のなさ、国王としての存在の重みのなさは興醒めだ。その結果、映画自体がすごくこじんまりしちゃっている。地位と富の欲望が渦巻く王宮、英国版「大奥」的ないやらしさの表現も不足して、なんだか軽いのである。ローマ法皇と対立なんかわずかにセリフの中に出てくるだけなのも軽過ぎである。そんなんじゃ、アンとの再婚騒動の事態の重大さが伝わってこないんだよ。
それで、後にヘンリー8世が崩御すると、アンが産んだ娘・エリザベスが王位について、それが偉大な女王・エリザベス1世になるのだが、映画「エリザベス」の前座映画としてもこっちの映画は弱すぎるなぁ。
で、今どきなんでまたヘンリー8世ものの映画を作ったの?と疑問に思ったんだけど、もしかして、それは、ヘンリー8世の即位500年記念に便乗しちゃったって事?

ちなみに、アンを演じているのがナタリー・ポートマンである。意外にもこの時代の衣装が似合っているので笑っちゃった。以前に映画「レオン」の中でマドンナのモノマネをやっていた頃とはまるで別人だねぇ。
 
映画「ブーリン家の姉妹」
http://www.boleyn.jp/
 
 

 
 

 
 

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