映画嫌い (421)

2009年5月17日 映画

本日のクソ映画は2006年の米国映画「ボビー (Bobby)」である。
ボブとかボビーってのは「ロバート」の愛称である。この映画でのボビーとは、元・米国大統領・ジョン・F・ケネディの弟、ロバート・F・ケネディのことだ。1968年、「ベトナム戦争からの名誉ある撤退」と「人種差別完全撤廃」の政策を掲げて大統領選に出馬したロバート・F・ケネディ上院議員(42才)は、予備選の投票日にロス・アンジェルスのホテルで撃たれて暗殺されてしまう。その日の朝から撃たれた直後までのホテルの様子を描いたという企画倒れな映画がコレだ。
 
ベトナム戦争で米軍兵の戦死者が続出し、キング牧師が暗殺される事件・・・と混迷する1968年の米国。故・ジョン・F・ケネディの弟であるロバート・F・ケネディ上院議員は、大統領選への出馬を宣言し、米国の国民からの圧倒的な指示を得ていた。次期大統領になるのは確実な状況だ。(以上が時代背景)
1968年6月4日、カリフォルニア州での予備選の投票日、カリフォルニア州ロス・アンジェルスのアンバサダー・ホテル。ケネディ陣営のカリフォルニア州における選対本部がそのホテルにあり、その日の夜、ケネディがやってきて演説をする予定になっていた。早朝から火災警報器の誤作動があったりして、ホテルの従業員も大忙しだ。支配人も緊張しながら、ケネディの演説を心待ちにしていた。
ホテルのレストランで下働きをしているメキシコ系の不法入国者の男は大好きなドジャースの試合のチケットを入手したが、仕事が忙しくて観戦に行けそうにない。
レストランのマネージャーは従業員に対して「忙しいので投票に行くな」と指示し、それを知って激怒した支配人はマネージャーに解雇を通告する。その支配人はホテルの電話交換手の女性と不倫中。一方、支配人の妻はホテルの美容室を仕切っている。
ホテルを定年退職した元・ドアマンの老人は、その日もいつものようにホテルのロビーにやってきてチェスを楽しんでいた。
その他、多くの人たちがそのホテルに出入りしていた。
ホテルでのディナー・ショーに出演するためにやってきた高ビーな歌手とそのマネージャー。
部屋でLSDを売っているヒッピーとその客はLSDでトリップ状態に。
顔はゴツいが、やけに人間味のあるレストランの調理チーフの黒人。
ホテルで結婚式を行なおうとしている若いカップルの事情。
ケネディにインタビューしたがっているチェコスロバキアの女性記者。
予備選でケネディ優位との速報が伝えられ、にわかに興奮する選対本部。
そして、遂にケネディがやってきて演説が終わる。その後、ケネディはレストランの厨房を通り抜けて裏口からホテルを出ることになっていた。ホテルの従業員たちも熱烈なケネディ支持者で、通路を歩いて厨房に向かうケネディは握手攻めになる。その人ゴミの中に拳銃を持った部外者が。ケネディは撃たれ、その場は騒然と。犯人はその場で取り押さえられたが、病院に緊急搬送されたケネディは死去したのだった。兄に続いて弟までが・・・。おしまい。
 
ケネディ役の役者は出てこない(後姿を見せるだけのダミーのシーンはある)。当時の実際の報道フィルムでのケネディ本人の演説風景を切り貼りして見せているのだ。だから、タイトルに反して「ボビー」感が全然ない。「ボビー」がまるで別の次元にいるんだもの。撃たれた直後の混乱する様子の映像のバックにケネディの演説する声が重なる、そ~いう虚しいだけの映画になっている。誰が主人公ってなわけでもなく、単に、ホテルの従業員やホテルに出入りしている人たちのそれぞれの人間模様を見せているだけである。そんなものだから、ストーリーなどありゃしない。いろいろな人間模様があるんだねぇ・・・ただそれだけの映画なのだ。それらの人間模様の個々についてもたいしたものでもなく、いったい何を見せたい映画なのかわけがわからない。見事なまでの企画倒れな映画だ。

ケネディを暗殺した犯人については、ホテルのドアを入って来るシーンと、撃って取り押さえられるシーンだけで、その他には何も描写されていない。犯行動機とか心理とか背景とか、そんなのは完全無視なのだ。それがこの映画の最大のミスだろう。いくらなんでも、こりゃないぜ。
 
この映画の原作を書き、監督をして、更に自ら出演もしているのが、俳優のエミリオ・エステヴェスである。歌手のマネージャーの役をやっている男だ。いやぁ、困った奴だ。この人、ケネディに何らかの強い思い入れがあったんだろうねぇ。それを映画として実体化しちゃったら、こ~なっちゃった・・・んだろうねぇ。私は久々にこの人の出ている映画を見たことになるんだけど、随分とフケたねぇ。エミリオ・エステヴェスと言えば、若き日のビリー・ザ・キッドの役で主演していた映画(タイトルは「ヤング・ガン」だったっけ?)とか、ミック・ジャガーのビデオ・クリップに出演していた時の少年顔の印象が私の頭の中では強いんだけど、今となってはすっかり中年男だ。

その他にも微妙に有名な俳優が登場しているのが、この映画の微妙なところだろう。アンソニー・ホプキンス、ローレンス・フィッシュバーン、ハリー・ベラフォンテ、デミ・ムーア、シャロン・ストーン、・・・と、あまり俳優さんについて詳しくもない私でさえも知っている俳優さんたちだ。なんだかそれがすっごい無駄に見えてしまうのがこの映画のすごいところだよなぁ。
 
ちなみに、音楽担当はマーク・アイシャムである。この人、すっかり映画音楽が活動の中心になっちゃっているねぇ。早くプログレ・ジャズ・ロック界に帰ってきてもらいたいものだ。
 
映画「ボビー」
http://www.toho-a-park.com/bobby/index.html
http://info.movies.yahoo.co.jp/detail/tymv/id326233/
エミリオ・エステヴェス
http://www.imdb.com/name/nm0000389/

 

 
 

 
 

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