映画嫌い (366)

2009年2月6日 映画

本日のクソ映画はウィル・スミスが主演の2008年の米国映画「7つの贈り物 (Seven Pounds)」である。この映画もそろそろ日本で劇場公開されるんじゃなかったっけ? 今後、この映画を見る予定の方は、以下を読まないように。
 
主人公のベン・トーマスは、人物の名前をリストにしたメモ書きを持っていた。ベンはIRS(内国歳入庁、日本における税務署のような存在の米国の国家機関)の身分証を持ち、IRSのコンピュータを使ってそれらの人物の個人情報をプリントアウトし、その当人にIRSの職員として接触する。そして、ベンはその人物が善人であるか確認する。彼の目的は未納の税金の督促ではなかった。彼にはある「計画」があったのだ。
ベンが接触した人物の中に、エミリー・ポーサという女性がいた。彼女は心臓が悪く、心臓移植を受けなければならないほどだ。ベンはそんな彼女と恋に落ちる。
(中略)
ベンは遂に計画を実行すべき時が来たと判断し、計画の協力者である親友のミシェルに電話で連絡する。ベンは宿泊しているモーテルの部屋に戻り、浴槽の中に氷を入れ、911(日本における119番)に電話し、自分が自殺することを告げ、その浴槽の中で死んでいく。
ミシェルは移植コーディネーターだった。ミシェルの采配によって、ベンの遺体の各部はベンの書いていたリストに名前のあった人物に移植された。心臓はエミリーに。リストに名前のあった盲目の男・エズラにはベンの角膜が。おしまい。
 
 
あのリストは何だったのか、「計画」とは何なのか、それらがラスト・シーンで明らかになる仕組みでこの映画が作られているものだから、ラストのそのシーンまで、意味不明の謎だらけのシーンが延々と続いてしまっている。だから、単なるエミリーとのラブ・ストーリーでしかないように見えてしまい、それがとても退屈なのだ。そして、最後の15分でいきなりとストーリーが急発進し、その「計画」とはベンが自分のカラダを移植用に提供する相手の選定およびその実行である事が明らかになる。
しかし、なぜにベンが自殺して自分のカラダを提供しようという気になったのか、その理由、原因、心理が見えてこないのがダメだ。ベンの運転ミスによる交通事故でベンの家族や追突した相手の車の人、計7人が死亡したというシーンを何度か断片的に見せているけれど、その事件とあの「計画」との関連が明確になっていないじゃないか。事故で家族を亡くした悲しみと責任を感じての自殺か? 移植ドナーとなっての社会貢献? 懺悔のつもり? 重要なポイントなのに、説明不足でなんだかスッキリしないねぇ。
 
米国の移植医療の観点から見てもこのストーリーは非現実的で穴だらけだ。
移植するには拒絶反応を起こさないように適合性の厳密な事前チェックが必要なはずなのに、どうやってベンは自分の心臓がエミリーに適合すると事前にわかったんだ? いくらIRSのコンピュータのデータベースでも、移植適合タイプなどの個人データは持っていないだろう。
それに、ベンの心臓がエミリーに適合するものだともしもわかっていたとしても、現在の米国の移植コーディネイトのシステムでは、ベンの心臓が必ずしもエミリーに移植されるわけでもない。移植待ちの人のデータは移植コーディネイト用の専用コンピュータで管理され、ドナーが現われた場合は、最も適合している移植先をコンピュータが判断するのが常だ。ミシェルのような専門のコーディネーターがいたとしても、そのような人物の意志や采配で移植先を指示したり、変更したりできないのだ。ベン本人の生前の意志、希望が遺書のようなもので残っていたとしても、移植先の決定権は本人にはないのだよ。もしもこの映画のような移植先の選定が実際にできたとしたら、米国は臓器売買天国になっちゃうぞ。また、現実には、移植を受けた人はドナーの情報には一切タッチできず、ドナーがどこの誰だったのか知る由がないのだが、この映画のラストシーン(エミリーがエズラを訪問する)はそれに反しているじゃないか。だから、この映画の結末には「ありえねぇ~!」としか感想をもてなかったなぁ。

ベンのあの自殺の仕方もダメだな。カラダを浴槽で氷漬けにするのは臓器の低温保存という観点からは良いけれど、あのように猛毒を持ったクラゲを浴槽に入れて、刺されて死ぬってのはいただけない。クラゲの毒は神経毒なんだから、刺された場所によっては、臓器に著しいダメージを与える事になっちゃうもの。最悪の場合、心臓が移植に使えなくなる場合もある。助けに来た救急隊の人が浴槽の中にいるクラゲの存在に気が付かないで刺されちゃう危険性もあるしなぁ。
 
ってことで、こんなアホなストーリーは素直に納得できんぞ。
 
 
映画「7つの贈り物」
http://www.sonypictures.jp/movies/sevenpounds/
 
 

 
 

 
 


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