映画嫌い (259)

2008年4月13日
 
本日のクソ映画は2007年の邦画「犯人に告ぐ」だ。雫井脩介の同名小説の映画化である。
 
神奈川県警の巻島刑事は身代金目的の誘拐事件を担当し、犯人の指定した身代金受け渡し場所で張り込みをしていた。ところが、犯人を取り逃がし、誘拐されていた子供が死体で見つかってしまう。巻島は記者会見の席に出ると、県警の失態だとして、彼はマスコミから激しくバッシングされるのだった。以上が長い前置き。
それから6年が経過した。
川崎市で3件連続の児童誘拐殺害事件が発生していた。犯人は自らを「BAD MAN」と名乗り、マスコミに犯行声明文を送りつけてきていたのだった。
地方の警察署に左遷されていた巻島は、県警の新任の本部長に呼び出される。本部長はかつての巻島の上司(当時、刑事部長)だった。そして、本部長から指示が出る。BAD MAN 事件の捜査責任者となり、解決の為にテレビのニュース番組「ナイト・アイズ」に出演して、視聴者に向かって情報提供を求めよ!と。「ナイト・アイズ」は犯人から犯行声明文が送りつけられてきた番組だった。
ところが、生放送の「ナイト・アイズ」に出演した巻島は、情報提供を求めるのではなく、犯人に向かって「BAD MAN、もしこれを見ていたら、私にコンタクトしてほしい。教えてくれ。なぜこんな事件を起こしたのか。今、何を考えているのか。これはお前の為の番組だ。主役が黙っていてどうする?」と言い、犯人との対話を求めるのであった。
異例のその内容に、テレビ局には視聴者から抗議が来るが、その一方では反響も高く、番組の視聴率が上がり、視聴者からの情報提供の数も爆発的に増えた。そして、郵送されてきた手紙の中に BAD MAN 本人からのものが。犯人しか知り得ない情報も書かれていたので、その手紙は BAD MAN からの物であると断定し、巻島は再度、「ナイト・アイズ」に出演して、犯人に向かって挑発する言葉で対話を訴える。すると BAD MAN 本人からの手紙がまたも。ところがその内容は、前回の手紙はニセモノであり、自分が本物の BAD MAN であると主張し、更には、その手紙の中にも本人しか知り得ない情報が。
その後も巻島は「ナイト・アイズ」に出演し、犯人からの手紙の内容を批判して挑発する。その態度にマスコミは批判的になり、犯人からの最初の手紙が巻島による捏造だという疑惑も広がってしまう。その結果、巻島は「ナイト・アイズ」から降番されてしまうのだった。
そんな時、巻島の6才の息子が誘拐されてしまい・・・。
 
 
雫井脩介の原作の小説は面白いとの話題の人気小説だったわけで、私も出版された当時の4年前に読んだことがあるんだけれど、私は面白いとは全然思えなかったんだよなぁ。山田悠の荒唐無稽なアホ小説の亜流にしか思えなかったんだもの。面白い小説だと言って知人にその本をプレゼントするわけにいかないから、古本屋に持ち込んだ。確か、買い取り価格が90円だったなぁ。そんなもので、映画化にも期待していなかったら、これが、予想以上にヘボい映画だったんだなぁ。原作のダイジェスト版でしかないんだもの。映画でダイジェストやっちゃってどぉ〜すんだよ? 原作を水で薄めたってな感じにしかなっていない。面白くない原作を更に水で薄めても面白くなるわけがないじゃないか。

テレビ番組を通じての巻島と犯人との関係が、知能戦にも、心理戦にもなっていなくて、盛り上がりもなく犯人が逮捕されちゃっているのが、果てしなくトホホだなぁ。かなりマヌケだ。で、なんで巻島はテレビ番組で犯人に向かって語っているのか、それも挑発的な発言をするのか、その心理や目的が何ら明確に説明されていないのがこの小説・映画の双方の最大のミスだろう。その行為が県警に有利な結果となったのは、小説での我田引水的な流れでしかなく、全くリアリティもなく、説得力もないのだ。安易なそのストーリー設定にバカバカしさしか感じない。
それに、県警内部での権力闘争、テレビ局の視聴率競争なんかをからめて、ちょっとした社会派ドラマにしたかったのが見え見えで見苦しいなぁ。そんなエッセンスを入れたのは逆効果で、かえって散漫になっているのが情けない。
 
それにさぁ、ヘンテコなんだよなぁ。誘拐犯から電話番号非通知で携帯に電話がかかってきても、警察の捜査権により携帯電話会社に電話をかけてきた相手の番号くらい問い合わせができるのに、それをしないんだもの。いくら非通知で電話しようが、発信元の電話番号の情報は携帯会社に記録として残っているんだぞ。その番号を表示するか否かは受信した携帯端末でのソフトウェア的な処理でしかない。
それにさぁ、犯人が住んでいると判明した地区の住民全員から掌紋の採取をしようとしているけれど、いくら警察でもそんな権限はない。法的に無理な越権行為なのだ。
その他にもいくつか、ありえない!ってな現実離れしたバカ・シーンがあったんだけど、この映画を見た人はいくつ気がついたかな? 私は13カ所だ。
 
 
映画「犯人に告ぐ」
http://www.hannin.jp/
 
 

 
 

 
 

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