映画嫌い (483)

2009年9月5日 映画

本日のクソ映画は2009年の香港映画「新宿インシデント (新宿事件 - Shinjuku Incident)」である。ジャッキー・チェン(成龍)主演の非カンフー映画だ。日本のヤクザとの格闘のシーンはあるけれど、カンフーしていないのである。日本では劇場公開済み。
 
1990年代の話だ。主人公の鉄頭(そ~いう名前なんだもの)は中国の東北の農村に住んでいたが、彼女が日本で暮らす叔母を訪問した後に音信不通になったものだから、彼女を探しに日本に渡り、そして日本で稼ごうと、日本への密入国を決行した。大勢の中国人の乗った密入国船で日本の若狭湾に到着し、上陸時に警官に見つかってしまったが、逃げて列車に乗って東京までやってきた。そして、先に日本に来ていた密入国中国人たちが密かに共同生活をしている新宿界隈のボロ家に転がり込んだ。鉄頭は日雇いの違法就労をしたり、変造テレフォンカードを売りさばいたりして生計を立てる。そんな時に、鉄頭は偶然と彼女を発見するが、彼女はヤクザの幹部の妻になっていたのだった。ショックを受けた鉄頭は、自分の生活を変えて、違法ではないまっとうな仕事しようと思うのだが、新宿界隈のヤクザの抗争、台湾ヤクザの事件に巻き込まれ、ヤクザに協力した結果、鉄頭は新宿における中国人のボスになってしまった。
(中略)
ヤクザに撃たれた鉄頭は逃げ込んだ下水溝の中で死んでしまい、下水に流されるのだった。おしまい。
 
密入国した鉄頭を待ちかまえていた日本でのうかばれない悲惨な生活、ヤクザの抗争に翻弄され、恋人もヤクザの妻、そして結局は哀れな死に方をしてしまう・・・という、ちょっとだけ悲しい内容の映画ではあるが、このストーリーには納得がいかないなぁ。違法就労で下水溝清掃作業をしていた鉄頭を捕まえようとやってきた刑事(竹中直人)が、鉄頭を追いかけている途中で下水溝で溺れそうになってしまい、それを鉄頭に助けられるものだから、命の恩人として鉄頭を見逃し、その後も鉄頭に便宜をはかるってのはヘンでしょ。そもそも鉄頭が逃亡しようとしたから溺れそうになったんだもの、「命の恩人」だなんていう理論が成立しないぢゃん。プロの刑事なんだから、プロとしての自分の仕事を全うして鉄頭を逮補しろよな。ちゃんと逮補していたら、鉄頭の人生も変わり、下水溝の中で死んで行くだなんていう悲劇的最期を迎えなくてもすんだだろうに。それにさぁ、彼女と、それと彼女とヤクザの間に生まれた娘のその後を見せていないのもダメだ。あの2人、結局どうなったんだ?
 
この映画をジャッキー・チェンの主演にしちゃっているのもいただけない。以前の彼の主演していたカンフー&コメディの路線と違っている映画で、こっちの路線に彼がマッチしているように見えないのだ。カンフーしていないから物足りないという意味ではない。このようなストーリーを映画化するにあたって、キャスティングという仕事を考えた場合、果たしてジャッキー・チェンを主演に選ぶってのはプロとして正解だろうか? 私は正解とは思えないのである。ジャッキー・チェンを主役にするってのは、彼がカンフーしない意外性というか、奇をてらっただけのような気がしちゃうのである。年も取ってきちゃったから、ジャン・クロード・ヴァンダムのケースと同様にアクションはきつい・・・ってな状況からの、非カンフー路線の彼の公開実験に見えてしまうのだ。彼は今後も非カンフーの路線で行くつもりなんだろうか?と他人事ながら心配である。余計なお世話か。
 
映画「新宿インシデント」
http://www.s-incident.com/
 
 

 
この映画の舞台となっている1990年代の東京の新宿、百人町、大久保の界隈の猥雑な様子は私もある程度知っている。当時、私は仕事で東京と札幌を月に2~3往復する生活をしていて、東京ではその近辺にある会社に出入りしていたから、その近くを通行したり、その近くで食事をする事が多かったのだ。朝鮮系の人たちが経営する本場の味の朝鮮料理はおいしかったねぇ。調子に乗って、朝鮮料理の犬の肉も食べたものなぁ。悪趣味だよなぁ。あの界隈の雑多とした場末の感じ、札幌には絶対にないもの。職安通りから見えた、ちょっと離れた所にある新宿の高層ビルの最上階で点滅する赤いランプ、そして、百人町の狭い通りの両脇に建ち並らんでいる小さなラブホ群のデンジャラスな雰囲気、いい味を出していたよなぁ。夜になるとその近くのあちこちに立っているアジア系や南米系の女性たちが「オニィサン、アソビ、ドォ?」って次々と声をかけてきたっけ。早足で歩く私についてきて、一緒に歩きながら会話をした女性も何人かいた。その手の女性は絶対に買わないという私が決めた家訓があるので、彼女たちの営業活動に私は乗ることは一度もなかった。
「どこから来たの?」と私が言うと、日本語が通じたようで「ペドゥ」と答えた女性がいたっけ。「ペドゥ? 知らないなぁ」と私が言うと、「ペドゥ、アナタ、シラナイ? ペドゥヨ、ペドゥ」と彼女は言う。良く聴くと、「ペルー」なのである。「あぁ、フジモーリだね、フジモリ大統領の国」と私が言うと、何を言っているのかわからなかったけれど、彼女は母国語でしやべり続けたっけ。彼女は毎日、同じ場所に立っていて、顔見知りになって、その後、私がその場所を通るたびに彼女は遠くから私に手を振っていたけれど、ある時から彼女の姿は消えてしまった。入管にでも捕まってペルーに強制退去になったのかなぁ。あれから10年以上過ぎた事になるけど、今、彼女は母国で平和に暮らしているだろうか?
明らかに男だとわかる女装したタイ人なんかも立っていたっけなぁ。あの人、性転換手術済みだったのだろうか? タイに行くと、街中にそ~いう元・男だったオネェさんがいっぱい立っているものねぇ。
JR大久保駅の近くには中国人が多かったなぁ。出身国によって立つ場所の縄張りみたいものがあるんだろうね。大久保駅と新大久保駅の間の商店の立ち並んでいる通りから、一歩、小路に入るとそっちの世界だものなぁ。ちょっと離れた場所から元締めの手下らしいチンピラが監視していたりねぇ。
その後、その界隈の浄化運動によって、その手の売春婦の一掃が行なわれたそうであるが、1990年代の猥雑としたあの場末の世界は今となっては懐かしい。21世紀になってから私はあの場には一度も行っていないなぁ。私が出入りしていたあの近辺にあったあの会社も今はもうない。
 

 
 

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