映画嫌い (236)
2008年2月21日本日のカス映画は2007年の米国映画「ライラの冒険 黄金の羅針盤 (The Golden Compass)」だ。
魔法の羅針盤で真理を読む特殊能力を持った少女が、誘拐された子供たちを救う旅に出る・・・ってな冒険ファンタジーなんだけど、これがまたハチャメチャなのだ。これって、子供向けファンタジー映画なんだよねぇ。子供が見てもワケがわからんのじゃなかろうか? ストーリーについていけないんじゃないかなぁ? 白熊さんくらいしか印象的なキャラが出てこないしなぁ。
この映画は3月1日から日本でも劇場公開されるようだ。今後、この映画を見ようと思ってい人は、以下を読むではない。
映画の冒頭に、この映画の舞台背景を説明するこんなナレーションがある。
「たくさんの宇宙があって、たくさんの地球が存在する。宇宙はひとつではないのだ。それらは互いに平行になっている。あなたの世界では、魂は肉体に宿るが、私たちの世界では、ダイモンと呼ばれる守護精霊として、魂は私たちに寄り添う。世界と世界をつなぐものそれがダストだ。私の世界では、学者が真理計を作り出した。それが黄金の羅針盤だ。黄金の羅針盤は隠された秘密を明らかにする。だが、真実を怖れた偽政者は羅針盤を破壊した。ダストについて語ることさえ禁じたが、ひとつの羅針盤が世に残った。そして、それを読めるひとりの人間が・・・。」
わけのわからない舞台背景だが、これが約80秒の間に語られるのである。これで、見ている者は冒頭から置いてきぼりにされちゃうのである。子供がこの映画を見ても、こ〜いう設定はちゃんと理解できないんじゃないかなぁ?
で、そのナレーションの最初に語られているのは、量子力学から導き出された仮説である「平行宇宙」、「パラレルワールド」の世界である。私はそれの物理学的な意味は理解できているが、一般人にはわかりっこないだろう。ってことで、一般人は、この宇宙のどこかに地球そっくりな別の惑星があって、そこでの出来事である・・・ってな前提でこの映画を見るしかない。
ナレーションの中のその次に出てきた未知なる単語が「ダイモン」だ。ここの説明だけではさっぱりその意味がわからない。映画を見ているうちに、次第にそれが何なのかわかってくる仕組みになっている。どの人間にも必ずペットのような小動物が常に自分に寄り添っていて、行動を共にしているのだ。その動物の総称が「ダイモン」である。子供に寄り添う「ダイモン」はいろいろな動物に変身して、鳥になって飛んだり、哺乳類になって走ったりするのだが、人間がオトナになるとその人間の「ダイモン」は固定化されて、人によって犬とか、猿とか、虎のような姿をしていて、変身はできない。でもなぁ、この映画ではそのような「ダイモン」が存在するってな設定がすごく邪魔なわけ。ストーリー上、「ダイモン」ってのがほとんど意味がない。なんでそんな設定が必要だったのか理解のできない存在なのである。
その次に「ダスト」という単語も出てくるのだが、それが何なのか、見ていてもはっきりとは理解できなかった。別の平行宇宙とつながっている謎の物質ってなところだろうか。英語の「ダスト(dust)」って「塵」という意味だからなのか、キラキラとした塵のような映像で表現しているシーンがある程度なのだ。
そして、本編が始まるわけであるが、最初の約30分くらい(ライラがジプシャン族に助けられるシーンのところまで)は、なんだかわけのわからないシーンや無駄なシーンが多くて、物語の意味がさっぱりわからないままの状態が継続し、ホント、置いてきぼりにされちゃうのだ。私はわけがわからなかったから、最初の約30分までを見たところで止めて、最初から見直しちゃったものなぁ。「ダイモン」が何なのか理解はできたが、荒唐無稽すぎるし、その他に出てくる固有名詞(人名、組織名、地名など)が多すぎる事もあって、頭の中の整理がつかないのだ。この映画をすでに見た人の中にも、私のここの書込みを読んで、「あぁ、そのような意味だったのか!」と思う人は多いんじゃなかろうか?
主人公は12才の少女・ライラ・ベラクア。両親がいなくて、叔父のアスリエル卿に育てられ、学校の寮に住んでいる。
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その学校は(イギリスのオックスフォードのような感じの)伝統的な学園都市・ジョーダンにある。
アスリエル卿は学会の要職にあり、北極の白熊の国で天からダストが降りてきている事を知り、ダストの研究の必要性を主張していた。ところが、マジステリアム(明確には意味がわからないのだが、イギリスの国教会のような威厳のある統治組織のように思える)から派遣されてやってきた男はアスリエル卿の説にイチャモンをつけて対立し、アスリエル卿の暗殺未遂を起こす。アスリエル卿はダストの正体を突き止めるための北極探検を計画するが、それに同行したいと言うライラのことを相手にしない。
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一方、その頃、子供たちが誘拐されて行方不明になる事件が多発していた。ライラと日頃一緒に遊んでいたジプシャン族のロジャーもビリー・コスタも行方不明になっていたのだ。
そんな時、ライラはコールター夫人と出逢う。学会に強い影響力を持ち、かつてはアスリエル卿と共に北極探検に行った経験もある女性だ。
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コールター夫人はまた北極探検に行く予定なので、ライラにアシスタントとして同行するように誘ってくると、北極に行きたがっていたライラはその誘いに応じることになる。しかし、ライラの身を案じた学寮長はライラに「黄金の羅針盤」を渡すのだった。
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その羅針盤とは、読む力のある者が使うと真理が見えてくるというものだった。(なぜにライラに渡したのか、ライラが読む力を持っている事をどうして見抜いたのか説明なし) 学寮長は羅針盤のことはコールター夫人には秘密にしておくようにライラに指示をする。
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ライラは、北極探検に行く前のしばらくの間、コールター夫人の家に居候することになり、飛行船に乗って、コールター夫人の住む都会へと移動するのだった。
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さて、ここで裏事情である。ダストのことが知られて、平行世界の存在が証明されてしまうと、マジステリアムの教義が否定されてしまう・・・と、実はマジステリアムは怖れているのだ。北極にあるボルバンガーという地で、ダストの影響を無にする研究をしているのがコールター夫人だった。コールター夫人はマジステリアムの手先の組織・ゴブラーの幹部だったのだ。ボルバンガーでの研究では、ダストの影響が少ない子供を利用しなければならなく、子供たちがゴブラーによって誘拐されていたのだった。
ライラはそのようなコールター夫人の秘密の一部を知り、コールター夫人の家から脱走する。ゴブラーの手先がライラを追う。捕まりそうになったライラを助けたのは、ライラのことを一部始終見守っていたジプシャン族だった。誘拐されたビリー・コスタの母親・ママコスタもそこにいた。そして、ライラはジプシャン族の船に乗って、ゴブラーに誘拐された子供たちを救出する為に、北極への旅に出ることになった・・・。
ここまでで最初の30分だ。詰め込みすぎである。頭がクラクラしてきた。
その旅の途中でライラが出逢って、ライラへの協力者となったのが、まず、魔女の女王・セラフィナ・ペカーラ(かつてジプシャン族の男と愛し合っていたという設定)、
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次に、途中で立ち寄った港で声をかけてきた飛行船乗りのリー・スコーズビー(羅針盤を見ているライラに声をかけきたんだけど、金目の羅針盤を狙ってきたオヤジだったり、ライラのカラダが目当てのロリコン・オヤジだったらどうしたのだろうか?)、
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そして、港のバーの貯蔵庫で下働きをしていた白熊のイオレク・バーニソンだ。
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イオレクは北極の白熊(セリフの中では「アイス・ベア」と言っているから「白熊」じゃなくて「氷熊」と呼ぶべきかな?)の王国・スバルバードから追放されて(彼は王子だったが、別の白熊との決闘で負けたのが理由)、港の連中に戦闘用の鎧も剥ぎ取られてしまい、バーの貯蔵庫で働いていたのだった。彼は鎧がなければ戦闘するパワーがなくなってしまう白熊なのだった。ライラは羅針盤でイオレクの鎧のある場所を調べ、イオレクが鎧を取り戻す。それが縁で、イオレクはライラに忠誠を誓い、ライラのシモベとなった。
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イオレクは北極のスバルバードで、白熊王国の王位を取り戻す為に現国王と再決闘を行ない、それに勝利し、イオレクは王となる宣言をする。
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これで役者は揃った。ライラたちは北極のボルバンガーを目指す。
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そして、ゴブラーとの戦闘、子供達の救出劇があって、ライラとコールター夫人の再会がそこであって、コールター夫人からライラの両親の秘密の暴露があって、アスリエル卿が捕らえられていることも知らされて・・・。
で、ライラと救出されたロジャー、そしてイオレクはスコーズビーの飛行船に乗って、アスリエル卿(実は叔父ではなく、ライラの父親だった!)の救出に出発するのだった。魔女のセラフィナも空を飛んで同行する。
それでこの映画は終わっている。
尻切れトンボである。この映画は続編を作って三部作になるそうだが、なんだかこの1作目の終わり方がめちゃくちゃ中途半端なのである。詰め込めるだけ詰め込んでおいて、それでいてこんな終わり方であるから、とてつもない肩透かしなのである。シラケるぞぉ。
次作ではアスリエル卿を救出して、マジステリアムと戦い、ダストの真実に迫る・・・ってな内容になっちゃうのかな?
私はこの続きを見たいとは思わないなぁ。こ〜いう映画はイヤだなぁ。
映画「ライラの冒険 黄金の羅針盤」
http://lyra.gyao.jp/
http://www.imdb.com/title/tt0385752/
あのぉ、羅針盤が有効に活用されたのは、イオレクの鎧のある場所の調査だけのようなんだけど・・・、それ以外にはほとんど役に立っていないよなぁ・・・と思うのは私だけであるまい。
さて、主題歌を歌っているのはケイト・ブッシュ(Kate Bush)だよねぇ。超・個性的な才女で、あっちの世界に行っちゃった・・・ってな感じの現代の魔女だったけれど、デビュー当時のあの姿もびみょ〜だったよなぁ。デビュー30周年にあたる今は、あのまんま、おばちゃんになっているねぇ。
http://www.katebushnews.com/katenews.htm
日本では、一般人にはテレビ番組「恋のから騒ぎ」のテーマ曲のあの声で知られているくらいか。
私は一度だけケイト・ブッシュに会ったことがあって、握手したことがあるんだけれど、めちゃくちゃ冷たい手をしていたのが忘れられない。まるで30秒前までは札幌の雪まつりで雪像を素手で作っていたような、氷のような手だった。視線を合わせたら、そのまんまるな目に引き込まれそうになって、危うく私もあっちの世界に行きそうになっちゃったもの。現代の魔女、恐るべし!
魔女にも「冷え症」ってのがあるのだろうか?
ケイト・ブッシュの動画をここで見られる。あの曲だ。
若い頃のやつだね。微妙だ・・・。
http://www.youtube.com/v/VqV65Vw7U9Q