暦嫌い (2)
2007年2月25日古代エジプトで始まった太陽暦は、1年を30日ずつ12ヶ月に分割し、余った残りの5日ないし6日を年の終わりにくっつけていたらしい。1年が365日であることを太陽の観測により知っていたのだった。
古代ギリシャの時代になると、1年が365日よりわずかに長い事が判明していて(正しくは365.2423日)、その小数点以下の補正の為に、1年が12ヶ月ある年が17回ある間に、1年が13ヶ月ある年が10回ばらまかれていたらしい。なんだかわけのわからない暦だな。
その後、ローマ時代となり、紀元前46年に現在の暦の原形が制定された。ローマ帝国の将軍・ユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザー)が制定したものとされており、その名前を取って「ユリウス暦」である。
そのユリウス暦とは・・・。
1年は現在の3月から始まっていた。
第一の月(現在の3月)は31日、
第二の月(現在の4月)は30日、
第三の月(現在の5月)は31日、
第四の月(現在の6月)は30日、・・・・と、30日ある月と31日ある月が交互になっていたのだ。
最後の月(現在の2月)は残りの29日だ。
4年に一度の閏年の概念もこの時に制定され、閏年には最後の月(現在の2月)を30日にすることになった。
現在の我々が使っている暦より合理的だと言えよう。
ちなみに、1年が3月から始まっていた(現在と2ヶ月ズレていた)というなごりが月の名前に現在も残っている。たとえば、10月は英語でオクトーバー(October)と言うが、このオクト(oct)というのは「8」の意味で、本来は「第八の月」ということだったのだ。「8」の意味の「オクト」ってのを使って、8本足のタコがオクトパス(octpus)、ドレミファソラシドの8音をオクターヴ(octave)って英語で言うものねぇ。
同様に、9月のセプテンバー(September)のセプト(sept)は「7」の意味であるし、12月の Dec は「10」の意味である。
その後、ユリウス・カエサルは暗殺されてしまった。ローマ帝国の元老院は彼の功績を讃えて、彼の生まれた月である第五の月(現在の7月)の名称に彼の名前「ユリウス(Julius)」を付けたのだった。英語で7月のことをジュライ(July)と言うのは、それが元になっている。
ユリウスの後にローマ帝国を統治したのはアウグストゥスだった。この時、元老院はアウグストゥスのご機嫌を取る為に、彼の生まれた月に彼の名前「アウグストゥス(Augustus)」を付けてしまったのだ。それが第六の月(現在の8月)だ。英語で8月のことをオーガスト(August)と言うのは、それが元になっている。
ところがそれには問題があって元老院は青くなったのだ。その問題とは、ユリウスの月は31日あるのに、アウグストゥスの月はそれより1日少ない。まるでユリウスよりアウグストゥスが劣っているような・・・。そこで元老院は政治的な配慮・思惑から、無理矢理と最後の月(現在の2月)から1日を剥ぎ取って、アウグストゥスの月の最後にくっつけてしまったのである。
これが現在の8月が31日あって、2月が28日しかないという暦の起源である。それから2000年後の今でも、あの時の元老院の苦肉の策に世の中は縛られているのである。
ユリウス暦では、4年に一度の閏年を設けて、その誤差を補正していたが、それでもその誤差補正は正確なものではなかった。1年が365.25日であれば4年に一度の閏年でピッタリの補正なんだけれど、実際には1年はそれより短い365.2423日である。だから、閏年でも補正できない微妙な誤差があり、その誤差はどんどん累積されていく。塵も積もれば山となる・・・である。当初は「春分の日」が3月21日だったのに、それが少しずつ前にズレてきた。西暦1582年になると、それまでの約1600年分のユリウス暦の誤差が積もり積もって、「春分の日」が3月11日にまで前にズレていたのである。この暦をこのまま使うと、そのうちに「春分の日」が2月にズレて、1月にズレて、何万年か後にはクリスマスが「春分の日」になってしまうし、正月が真夏になってしまう。
そこで、ユリウス暦の改訂版として制定されたのが、現在、我々が使っている「グレゴリオ暦」である。西暦1582年、時のローマ教皇・グレゴリウス13世が制定したものだ。10日も前ズレした「春分の日」を元に戻す為に、いきなり10日を存在しなかったものとして、1582年10月4日の翌日を1582年10月15日としたのだった。
更には、今後のズレを解消する為に、西暦の年数が100で割り切れる年は閏年にしないが、400で割り切れる年は閏年にするというルールも決められた。ってことで、今から7年前の西暦2000年に、我々は、その400年に一度という貴重な閏年を経験したことになる。
それでもまだ誤差は残っている。現行の「グレゴリオ暦」でも完璧ではないのだ。3000年で1日だけズレる計算になる。その補正に関するルールは今もって何も決められていない。今後、近い将来か、遠い将来か、この問題を誰かが解決してくれるのだろうか?